INAXライブミュージアム ものづくり工房 ものづくり工房

アーティスト岡崎乾二郎さん設計の個人住宅が完成しました
2012/2/27
伝統技術の復原と伝承

【アーティスト岡崎乾二郎さん設計の個人住宅が完成しました】


 造形作家・岡崎乾二郎さんが設計した個人住宅、「国分寺オライビ パアフ」と「U邸」。
こちらのタイル制作をINAXライブミュージアム ものづくり工房がお手伝いしました。

ものづくり工房では過去にも、岡崎さん設計の個人住宅、東京都現代美術館での展示など、岡崎さんが釉薬で描くタイルの制作をお手伝いしてきました。

その経験をもとに岡崎さんと一緒に、素地と釉薬の発色試験や様々な実験や試行錯誤を繰り返し、さらに進化した、岡崎さん制作のタイルを存分に使用した贅沢な空間ができあがりました。


国分寺オライビ パアフ 撮影:梶原敏英
国分寺オライビ パアフ 撮影:梶原敏英


岡崎さんの描くタイルは、素地の色と釉薬の色の組み合わせ、また釉薬の厚みによっても発色が違ってきます。異なる釉薬が混ざり合う部分の発色。これらの要素をコントロールしながら、描かれています。
タイル1枚ではなく、複数のタイルで構成された面としてデザインされているので、非常に複雑な作業となっていきます。

試作や見本作りを何度も繰り返し、無数のパターンの中から岡崎さんが絞り込んだ組合せの作品になっています。






制作は毎回、ものづくり工房で行われます。枚数の多い場合には数日間、そして何度もものづくり工房へ、足を運んでタイルの制作を行っていきました。
作業場では毎回静かな緊張感のある中で制作が進んで行きます。躍動感やリズム、一度描いてしまったら修正がきかないこともこの緊張感につながるのかもしれません。
少しづつ描かれたタイルが作業場に並んで行きます。
これらを、1200℃以上の温度で焼成します。窯の中で焼かれて表情も変化します。
岡崎さんは焼きあがったタイルを選びぬき、配置を試行錯誤し、最終的に空間に使用される作品が決まって行くのです。

















【「国分寺オライビ パアフ】


床には岡崎さんの描くタイル3パターンを用い、壁には岡崎さんの配色したタイルパターンが張られ非常に贅沢な空間に仕上がっています。
タイル総数は、3400枚以上。

また、トイレ2台もそれぞれ釉薬を開発し、焼きあげた特別仕様になっています。









撮影:梶原敏英
撮影:梶原敏英

【U邸】


こちらも床には2パターンの岡崎さんの描いたタイル。壁の配色パターンも、物件毎に使用シーンに合わせて決められていきます。

タイル総数、2600枚以上。










撮影:中川周
撮影:中川周


今回、この2つの物件のお手伝いをさせていただき、タイルの持つ可能性を岡崎さんに改めて教えていただいたと思います。岡崎さんの描くタイル、タイルにここまで装飾性を持たせて床に配置する。絵の上で生活する。このような発想はありませんでした。

また、岡崎さんの提案するパターン張り。色やタイルの大きさでリズムを作ったり、艶のあるものと無いものの組み合わせ。これらはタイルを作る我々にとっても非常に新鮮でした。

改めてタイルの装飾性、質感の高さを実感し、まだまだタイルには可能性があるのだ、と感じました。





寄稿 『装飾に守られ、育てられる。』 岡崎乾二郎

被覆という言葉がある。この言葉、人間から考えるのと、建物から考えるのとでは内と外の方向がまったく逆になる。

 正しくは人間から考えるべき。(建物を被覆しているのではない)。人間の身体と精神をやさしく包み、守る。それが建物とよばれる被覆の意味である。(大切なものを梱包し箱に納めるときと同様に、この箱を強化するコンクリートや鉄骨などの構造は、そこに納める大切な宝物=人間から考えるといちばん外側の被覆材−ガードにすぎない)。

 われわれの知覚にいちばん近く、直接ふれるもの=つまり脳に近く、また身体に近いもの。ゆえに、それはわれわれの皮膚そのもの=感覚受容器だともいえるだろう。

 この、膨らみをもった表面が、古来、様々なあらわれ=表情をもっていたのは必然である。人間が人間であることを自己確認させてくれる表情。装飾性とは、こんな被覆の表情を示す言葉でもある。すなわち装飾はそこに住む人の精神そのものを照らしだし、やさしい見つめる顔であり、さらに住む人を包む身体であり、その精神を整え、そして成長させてくれるインキュベーターである。母親あるいは父親。そして神様のような。

 『外界の恐ろしさに負けない』と心構えさせ、勇気づけてくれるもの。そこで装飾は単なるたいらな表面ではない。そのまなざしは、まさに物質としての力強さをもってわれわれを守る。これが装飾が、物質としてあることの意味である。外界のめまぐるしい変化に流されない、千年一万年以上の長い時間がそこに含まれうるならいうことはない(装飾は見ても見ても見飽きないリズム、触っても触っても手に打ち返す温度、それが残像のようにいつまでも心と体に刻み込まれ残ることが重要である)。





*HPの関係上、本文中は岡崎乾二郎と表示しています。
1955年東京生まれ。
造形作家、批評家。1982年パリ・ビエンナーレ招聘以来、数多くの国際展に出品。
2002年にはセゾン現代美術館にて個展。同年「ヴェネツィア・ビエンナーレ第8回建築展」
(日本館ディレクター)、現代舞踊家トリシャ・ブラウンとのコラボレーションなど、
つねに先鋭的な芸術活動を展開。近畿大学国際人文科学研究所教授、副所長。
作家HP:http://kenjirookazaki.com/







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