2011年10月11日 インタビュー:大橋恵美(INAXギャラリー)
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大橋 |
ガレリアセラミカ(2010.1)、タイル博物館「やきもの新感覚」(2010.6)、今回ギャラリー2と、三度登場頂きました。先月まで兵庫県立美術館、豊田市美術館(2011.12.25迄)展覧会を開催されて、たいへんお忙しい中ありがとうございます。桝本さんのユニークな作品は茶道から発案されて、素材もモチーフも「日本の陶芸」です。
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桝本 |
私は幼少期に習った茶道の道具の見立てなどの考え方ややきものの感触、長じては真葛焼きなどを見て、土を素材に、「陶芸」をモチーフにした作品を制作してきました。親しみやすいという点では美術よりも陶芸の方が一般に受け入れやすいということも素材を選んだ理由です。
アートギャラリーに来られる方はアートの目線で見られるのですが、今回美術館ではいろんな方が来られました。
兵庫県立美術館のこのシリーズ企画はちょっと特殊で、観客が触ることができるというのがテーマです。 作家は館の所蔵品を展示してもいいし、作家の作品のみでの構成も可能で、今回私は丹波の陶芸美術館から古陶磁をお借りし、その写しをつくり、さらに発展させたものもつくるという三作品で一組という展示をしました。兵庫ではこの「美術の中のかたち−手で見る造形展」という企画を継続していて、近年は若手作家を取り上げているようです。
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大橋 |
陶芸美術館に入ると保存や保管から多くが触ることができませんから、この企画は面白いですね。桝本さん自身も、これまでとは違う視点が持てたのではありませんか。
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桝本 |
そうですね、これまでは美術館などに大事に展示してある工芸品というイメージで制作していたのですが、本来なら工芸品は触るものですので、そういった点についても考えさせられました。会期中に何度か壊れましたが、できるだけ好きに触ってもらった方が良いので、壊れたらまたつくるくらいの気持ちでいたのですが、幸運にも壊れたのは小さな部品だけでした。
ボランティアの方が常時二人いて、説明もしてくれるので安心でした。その方々から観客の反応をお伺いしたり、観客からも直接メールで感想を頂けました。感想をお伺いしていても、触ることが作品との距離を縮めていると思いました。
私の作品は日本の陶磁のデザインや技法自体が制作テーマで、今までも過去の名品を見てそこから考えていたので道順としては一緒なのですが、三作品一組として、展開と発想を具体的なかたちで、考え方の過程を見せることができたのはとても良かったです。
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大橋 |
分解して見せることで、自身でも改めて再発見したことはありましたか。
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桝本 |
観客は、私の製作の順番を見せたので、とてもわかりやすかったようです。私にとっても観客が触ることの効果が一番でしょうか。陶器は工芸だから触れられるのは当たり前なんですけど、現実にはそうもいかないですからね。
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大橋 |
そういう境界を取り払いたいと思いますか。
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桝本 |
そうです。でも、なんでもそうなんですが、いろんなテーマが入って来るとわからなくなります。これからそれをどう整理しようかと考えています。
2010年後半には縁があって、アメリカのフィラデルフィアの学校のゲストプログラムに半年ほど行きました。
そこでは、思ったよりも落ち着いた作品の生徒が多かったです。 クラフトとアートの住み分けは日本と同じようにあるんだなと思いました。私が日本の伝統的な技法を使っているので、それを教えたり、クラフトとアートの話をよくしました。自分自身、変わるかなと思ったんですけど、実際はあまり変わりませんでした。せっかくなので洋風の壺をつくってみたくらいです。
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大橋 |
これまで西洋風でなく和風なものに強く惹かれると話されていましたが、それは変わりましたか。
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桝本 |
変わりませんでした。でも、それまで素材を変えたいと思っても陶器以外に思いつかなかったのですが、今回初めて食品で何かつくってみたいと思いました。
アメリカでは食で遊ぶ文化があって、クッキーを粘土みたいに使って捨てたりするんです。カップケーキが流行っていて、そのデコレーションがぬいぐるみのようであったり。日本だったら食べ物で遊ぶことはタブーですが、それを見て、食べ物は大切にしなくてはいけないけれど、あまり神経質過ぎるのもどうかと感じました。日本にもそういう文化がないわけではなく、飴細工とか装飾的なものはありますよね。お砂糖で作品をつくっている方もいらっしゃる。以前、姫路菓子博というのがあって、姫路城の側にお菓子の姫路城ができました。食べないけどお菓子、使わないけど器のかたちというのと似ているんじゃないかと考えています。いつかそうした作品にチャレンジしてみたいです。
今展では大きな作品を考えていて、ジオラマや地図みたいな作品が、お皿や壺などの集合でできていて1点180cm角大になる予定です。例えばこれまで「雀/壺」、「金閣寺/皿」のように器とそれに組み合わせるかたちの関係を1対1というバランスで1作品をつくってきましたが、今回は「町/壺、皿」みたいなイメージです。
観光地に行くと、立体パノラマ地図で城下町などが作ってあって、ボタン押すとその場所が光るものがよくありますよね、そういうものをつくります。地図といっても正確な縮尺でなくて、いいようにデフォルメされている観光マップみたいなイメージです。
とにかく、わかりやすく、楽しんでもらえる展示にしようと思っています。
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/インタビュー終了//>