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ライブミュージアム日記

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2009年以前の記事は、ライブミュージアムでの日々の出来事やスタッフの想いを綴ったものです。

2006年9月以前の記事は、土・どろんこ館開設準備室による「どろんこ広場」として書かれたものです。


独自企画や地域との連携で、コンサートや講演会、ワークショップなど、さまざまなイベントを開催しているミュージアム。ライブ感あふれる活動をスタッフがご案内・ご報告します。

No.119 バラとタイル

2009/05/31

担当 尾之内

世界のタイル博物館には、紀元前から近代までの装飾タイル1000点が常時展示されていますが
皆さんもうご覧になりましたか?
地域や時代によって、様々な意匠や性質をもった美しいタイルがずらりと並んでいますが、
私が特に注目しているのは、タイルに描かれたモチーフです。
注意してみると、幾何学模様や紋章、草花、動物など、実に多様な絵柄がタイルを飾っているのに驚きます。

さて、話は変わりますが、5月〜6月といえば「バラ」のシーズンですね。
近所を散歩しているときも、手入れの行き届いた庭先にコロコロとかわいらしい花をつけているバラが目に付くと、ふらふらと近寄っては見せていただいたりしています。
私はバラが好きで、一時は我が家の狭いベランダで20種類ほどのバラを育てていましたが近頃はなかなか世話をする暇がなく、残念ながら一鉢、また一鉢と、バラたちは実家の庭に居を移していきました。



オールドローズ

凛とした佇まい 杏色のバラ



そんな私が日々楽しみに眺めている「バラ」が、世界のタイル博物館にあります。
そう、タイルに咲いたバラです。



イランのタイル

イギリスの象嵌タイル

一見、何の関係もないように思われるバラとタイルですが、その歴史を紐解くと、興味深いことに、
似ている点が多くあることがわかります。


アールヌーボー調のデザイン

イギリスの銅版転写タイル



人類の文明において最初にバラが文献に登場するのは、紀元前2000年頃のメソポタミアの「ギルガメシュ叙事詩」といわれています。(人類最古の建築壁の装飾も、この頃ウルクの人たちの手によって施されています。)シュメール文字で刻まれた物語のなかにトゲのある植物として描かれているバラは、当時隣接するトルコやペルシアに自生していた植物で、この頃既に宮殿の庭などで香料や薬用として栽培されていたそうです。

時代が下って、紀元前300年頃のエジプトでは、プトレマイオス朝最後の女王クレオパトラもバラを愛したといわれます。ダマスクローズから抽出したオイルでその豊かな香を身にまとい、カエサルやアントニウスを魅惑したのでしょう。古代ギリシアでは、詩人ホメロスがその詩のなかで、若い人の美しさを「バラの頬」と例え、歴史家ヘロドトスは歴史書の「ウラニア」の巻にバラについての記述をのこしています。



ヘロドトスが「60枚の花弁を持つ」と記述した「ロサケンティフォリア」


古代ローマにおいても神殿の庭で数多くのバラが栽培されていましたが、ローマ帝国が分裂するとイスラム帝国(サラセン帝国)によってバラは大切にされるようになり、イスラム勢力の拡大とともにスペインに持ち込まれて多くの品種が生み出されました。

このように、装飾タイルの発祥と発展にどこか似ているバラの歴史ですが、装飾タイルと同様、当世で勢力を持つ国で盛んに栽培され、始めは特権階級や身分の高い人々の間で親しまれてきたことがわかります。
後に小アジアから十字軍によってもヨーロッパにもたらされたバラは、中世には教会や修道院の中だけで栽培されることが許され、庶民のものとなったのはルネッサンス以降だそうです。ダン・ブラウンの小説「ダヴィンチ・コード」では、キリスト教会において、バラはイエスの妻とされる(一方では娼婦ともいわれますが)マグダラのマリアを象徴するものとして描かれていたのは記憶に新しいですね。

もうひとつ、長いバラの歴史の中で忘れてはならないのが、皇帝ナポレオンの皇后ジョセフィーヌの功績です。


皇后ジョセフィーヌ

ジョセフィーヌは300種ものバラをマルメゾン宮殿の庭園に植え、バラの研究と新品種づくりを後援して現代バラの基礎を築いたといわれています。バラの画家として知られる宮廷画家ルドゥーテも、ジョセフィーヌの依頼で宮殿のバラを描き、「バラ図譜」は当時のバラの様子を知る貴重な資料となっています。

現代でも多くの女性を魅了するバラですが、こんな歴史に思いを馳せながら愛でるのもまた一興かもしれません。

さて、バラの季節、ライブミュージアムにはバラの木はありませんが、(バラ好きな?)女性スタッフがバラを持ち寄り、美しく生けてお客様に楽しんでいただいています。(鈴木さん、小島さん、有難うございます!!)



受付でお客様をお出迎え

ショップにも可憐な一重のバラが



ミュージアムショップにも、ルドゥーテの描いたバラのカードセットや、タイル壁掛けなど、この季節ならではの商品が並んでいます。バラのモチーフを染めた「かまわぬ」さんの手ぬぐいも人気です。
どうぞお見逃しなく!


ルドゥーテのカードセット

人気のバラのてぬぐい


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