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ライブミュージアム日記

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2009年以前の記事は、ライブミュージアムでの日々の出来事やスタッフの想いを綴ったものです。

2006年9月以前の記事は、土・どろんこ館開設準備室による「どろんこ広場」として書かれたものです。


独自企画や地域との連携で、コンサートや講演会、ワークショップなど、さまざまなイベントを開催しているミュージアム。ライブ感あふれる活動をスタッフがご案内・ご報告します。

No.66 ブータンの土、やきもの事情

2007/05/29

担当 立花

インドと中国に挟まれた、九州ほどの大きさの「ブータン王国」。 日本の国際協力機関からの派遣で建築関係の仕事をしている友人を訪ね、ブータンを旅行してきました。
標高約2,300メートル。軽い高山病の症状と共に、山の谷間にあるパロ国際空港に降り立つと、男性は「ゴ」、女性は「キラ」という独特な民族衣装に包まれたブータン人のお出迎え。政府が着用を奨励していることと、伝統文化を重んじる国民性から、ほとんどの人が着ています。





教育費が無料のブータンでは、幼稚園から英語教育が始まり、小学校に入ると国語であるゾンカ語の授業以外は全て英語で授業が行なわれるため、英語が堪能な人が多く、コミュニケーションの不自由はほとんどありませんでした。

さて、ブータンの土・やきもの事情をご報告します。 ブータンの民家の特徴は、版築(板枠の間に土を詰めて上から突き固める)や石積みの組積造の部分と、木の枠組みの中に竹を編んだ芯を入れて土壁を塗り上げていく木造真壁工法とが組み合わさってできています。





漆喰壁に絵が描かれたお寺

台所のかまど

土・どろんこ館でも使われた版築工法の伝統的なやり方が見られると楽しみにしていましたが、最近は、特に都市部でコンクリート造の建築が増えており、版築工法で建てている工事現場を見ることは少なくなったと友人は話します。 実際、国内の半分を車で移動しましたが、中心部に位置するブムタン地方のウラという町で行なわれたお祭り(チェチュ)を見に行った際、祭りの会場である寺院の敷地を囲む外壁工事で見ることができただけでした。







また、以前は近所の人たちが助け合いながら協働で土を突き固めて家を建てていましたが、近代化が進み教育水準が上がると、いわゆる“3K(きつい、汚い、危険)”の仕事をブータン人が嫌がるようになり、そのような仕事はインドやバングラディッシュからの出稼ぎ労働者やネパールからの移民といった、安い労働力に頼らざるを得なくなっているそうです。 車を走らせると、住む人が絶え、木構造が朽ち果てて土壁だけになった廃屋を、郊外のところどころで見かけました。





住で土を使ってきたわけですから、食でも土を使った食器、つまり陶芸が盛んでも良さそうなもの。しかし、食事の度に出されるのは味気ないプラスチック食器と外国製大量生産品のマグカップで、やきものの食器がないのか不思議でなりませんでした。




また、伝統工芸の保存と普及を目的とした職業訓練施設「国立伝統工芸学院」でも、塑像クラスで粘土を使っているものの陶芸クラスが無く、「粘土があるのになぜ?」と疑問は高まるばかりでした。




そこで、ブータンの陶芸事情を現地で調べてみました。 山に囲まれたブータンは元来「木」の文化を持ち、手軽な材料である木をくりぬいて食器を作っていました。当時の食生活が木製の食器で十分まかなえたため、陶器は発展して来なかったと思われます。 しかし、森林伐採による自然木の減少や、木彫り職人の後継者不足、安い輸入品の流入などにより、食器の材料が変化。最近では輸入のプラスチック食器が主流となっています。

そのような流れのなか、最近になって陶器産業を開発する動きが出ています。 伝統工芸学院の教師をやきものづくりの現地調査に派遣。調査の結果、野焼き程度のやきものづくりが国内2箇所で細々と行なわれていた程度で、高齢化と後継者不足で廃れる寸前だったそうです。そこで昨年、教師一人を陶芸の勉強のため半年ほど韓国に留学させたとのこと。来期から陶芸クラスをスタートさせる予定で生徒も集めていますが、ロクロや窯など陶芸機材はまだ一つも揃っておらず、当面はデザインの勉強をさせるそうです。




建設・電気技術系の職業訓練校の校長先生は、「昔は、陶芸は階級が低い人の仕事とみられていた。今は、職業の差別は無くなっているが、3Kの仕事が敬遠されているから皆やりたがらないのではないか」と、新たな産業として成り立つには前途多難と言いたげでした。労働力だけでなく、お米ですら国産よりインドからの輸入品の方が安いのが現状で、「国産」にこだわる必要は無いということでしょうか。
しかし、ボランティアで伝統工芸学院に洋裁クラスを2年前に立ち上げ、教えてきたベトナム人女性は、「以前は階級の低い人の職業と見られていた洋裁も、今風のデザインやアレンジをする力を身につけさせ、ファッションショーを開いて洋裁の楽しさ、すばらしさを広く認知させていくうちに、洋裁職人に対するイメージはがらりと変わった。陶芸も同じでこれから」と話していました。

これまで他国を訪問する際には事前に情報収集を行ない、その国の陶芸産地を訪ねるよう心がけてきました。しかし、今回の旅行では下調べで陶芸についての情報が全く入ってこなかったため、実際に窯場に足を運んだり、伝統工芸学院で陶芸クラスを立ち上げる先生に直接話を聞いたりする機会を持つことができませんでした。もしかしたら、粘土は取れても高温焼成に適さず、食器として強度的に劣ったため使われず、産業としても発展してこなかった可能性もあります。

今回の訪問では、ブータンのやきもの事情について十分な調査ができなかったことが悔やまれます。ぜひ再訪して、やきものの現場を直接見、話を聞き、「なぜ?」の答えと今後の可能性を追究したいと思っています。

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