建築・美術展 GALLERY 2




展覧会案内

黒崎香織 −SOMETHING TO SEE−展<br>Kurosaki Kaori Exhibition

黒崎香織 −SOMETHING TO SEE−展
Kurosaki Kaori Exhibition

2011年9月1日(木)〜9月28日(水)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク 9月1日(木) 18:00〜19:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

PHOTO:子供たちと 2011 縦180cm×横175cm 半紙、クレパス等



展示会概要
黒崎香織の作品は、オイルパステルで巨大な半紙いっぱいに描いた蛾や風景の絵画です。書道用の半紙を継いで約2メートル四方にした紙に、はみ出すほどの大きさで、羽根を軽く広げた蛾が画面上に配置されて描かれます。
塗り込められた色は油彩のように重厚で、蛾の体毛の質感や羽の模様が、和紙の毛羽立ちや透明感で強調され、薄い紙が風で揺れるとき、一瞬騙し絵のように視点が揺らぎます。
子供の頃から蛾が怖くて克服しようと描き始めたシリーズですが、描いているうちに蛾の羽の持つ独特の強烈な魅力に捕らわれるようになりました。
平行して描いている風景画では、矩形の中に矩形の風景を入れ子にして、視線を複雑にさ迷わせます。ともに写真をコラージュして構成してから紙に起こす制作方法をとっており、画面の端から埋めるように描きます。描いている狭い範囲へ常に100%の力を注ぎながら進むため、画面全てに均等の力が拮抗し、奥行きがわからなくなり視点は混乱してモチーフの焦点が消失していきます。
黒崎香織は現在京都市立大学大学院在学中で、ずっと地元京都で生活をしてきました。着物の図案を描く父の仕事を見て育ち、サブカルチャーと絵画が好きで、在学中に少女向けイラストの仕事をするなど、古都の伝統の中で常に新しいものを指向して描き続けてきました。
今展は初の個展となります。薄く軽やか、濃厚で激しい、若いエネルギーをぜひ会場でご覧ください。

黒崎香織

ボーイズライク 2010 H190×W200cm 半紙、クレパス

黒崎香織

我が学び舎の記憶 2011 H210×W210cm 半紙、パステル等


黒崎香織

2011年 ギャラリー2会場風景

インタビュー
2011年7月6日 インタビュー:大橋恵美(INAXギャラリー)
大橋 黒崎さんのモチーフは昆虫の蛾ですが、それも2m四方の画面いっぱいに描かれていて強烈です。蛾の毛羽立った質感とベースの薄い和紙の起毛、透けて風で揺れる感じが、蛾の動きを連想させて印象的でした。技法はパステルですが、最初油彩かと思うほどの重厚さを感じました。パステルを選ばれたのはどうしてですか。
黒崎 パステルではなくサクラクレパスを使っています。画面がしっとりとしてかつマットなところが気に入っています。私は手近にあるものを使って探りながら描いていて、最初は段ボールや厚い紙に描いていましたが、今は半紙を使うようになりました。それも書道用の50枚とか100枚入りパックを買って、1枚ずつ糊で継いで必要な大きさにしています。描いているうちに半紙とクレパスが馴染んでいくので、継いだ段差も自然に気にならなくなります。
大橋 昆虫をモチーフにしている人は多くいますが、蛾を選んだ理由はありますか。
黒崎 とても怖かったんです。小さい時からすごく嫌いで、いたら泣き出していました。蛾は見た目の情報量がものすごく多いと思います。大きくて予測不能に動くし、生きものとして衝撃的です。あまりに怖すぎるので克服しようと思ったんです。今はそれを楽しんで見ています。
制作方法としては、自分で写真を撮ったり、図鑑やインターネットの画像を伸ばしたり歪めたりした写真をコラージュしています。ただ、描くときには蛾を生きものとして扱っておらず、画面の中での強烈なパーツとして扱っています。蛾を配置するときには「蛾が止まっている」ではなく、「蛾を置く」という扱いをします。
蛾の種類にも詳しくなりました。好きな蛾は模様が濃いもので、今描いているのはキョウチクトウスズメという夾竹桃の葉を食べるスズメガです。
大橋 風景画も制作されていますが、「我が学び舎の記憶」(2011)は、静かな内に秘めた強さが感じられます。
黒崎 蛾と風景はずっと平行して制作しています。
最初、風景写真の中から良いと思うかたちを選んで描いていたんですが、どんどん激しい描き方になって、しまいにはドイツ表現主義みたいになってきて、画面が凝り固まってすごく苦しくなったんです。私は画面の端から順番に埋めていくように描くので、その部分に常に100%の力を注ぐんです。結果的に全部の力が均等になるんです。
その後、蛾の擬態と背景の兼ね合いから図と地の関係が面白くなってきて、同じ場所をいくつもの別の角度から撮って、その中から選んだ写真をコラージュして、視線があちこちにいくような絵を描くようになりました。スクエアの中にスクエアを入れた画面構成が好きです。奥行きがわからなくなったり、広がりが出たり、視線が一瞬混乱して漠然と見ることになるのが、いいのかもしれません。
大橋 複雑な視線配置が黒崎さん独特の画面をつくっているんですね。「あの店」(2010)という作品はどのようにしてできたのですか。
黒崎 京都四条通のショーウインドウを使って、学生が作品を置かせてもらうという企画があって、私はこのお店を選んで、蛾の作品を持っていこうとしたんです。婦人服のオーダーメイドのお店で、蛾と毛皮が合うと思って。そうしたら、ご婦人方はこういうのは怖いのでもっとふわっとしたものを持ってきて欲しいと言われて、結局別の場所に移りました。その恨みの思い出と、撮った写真の色が良かったので、「あの店」と隠して描きました。
大橋 黒崎さんのモチーフ選びは嫌いなところから始まるんですね。描いていて嫌な事を思い出し苦しくなることはありませんか。
黒崎 いえ、描いている時は画面のことしか考えていないので、気持ちはおまけの笑い話みたいなものです。
私は絵を色やかたちとして受け入れているので、絵から意味や気持ちを推測する見方というのがわからないんです。
最近金沢21世紀美術館のピーター・マクドナルド展を観に行ったのですが、すごく可愛い絵なんですが、それをどういう気持ちで描いたのか、なぜピンク色なんだろうとは思わないんです。部屋いっぱいの壁面作品も画面の広がり方や場所の空気を一番に見るんです。
絵を描くのは好きでも美術作品には興味がなくて、大学に入学した時もシャガールくらいしか知りませんでした。今は現代美術も見て楽しいと思いますが、美術と関係のない友達といる時に、わからないって言われるような溝を感じるので、大勢の人と共有できる、大衆的なものへの憧れはずっとあります。それが表現かどうかは置いておいて。
大橋 発表するということは黒崎さんにとってどういうことですか。
黒崎 見てもらって、それで見た人の目線がちょっと変ったらいいなと思います。今はまだそれだけやれたらいいかなと思っています。
私は一時期少女小説の挿絵の仕事をしていました。両立はできなかったので学校を1年休んで一生懸命やりました。仕事が来なくなったので学校に戻ってきましたが、マンガの平面的なものの見せ方、画面のつくり方は今も描く時に影響していると思います。
大橋 古都京都に住んでいますが、別の町に行きたいと思いますか。
黒崎 京都が良いです。父が着物の図案の仕事をしていて、小さい時はよく父の仕事を見ていました。紙が薄くて近寄るのが怖くてすごく緊張感がありました。
今年の春に、日本では大変な災害が起こりました。この先何が起るかわからないと切実に思うし、世代的に諦観もあるのですが、それでも生きている以上描いたり、ものをつくっていきたいと考えています。作品から得られる感覚というのは私には新しい味覚みたいなもので、それは美術だけでなく音楽からも得ています。私はそれに触れることが好きだし、これからもよくわからない、未知のものに関わっていきたいです。
作家略歴
1987年 京都生まれ
2010年 京都市立芸術大学 卒業
展覧会
2009年 四条ストリートギャラリー/コトクロス5F
2人展「ごり押しにょきにょき」/京芸小ギャラリー    
2010年 2人展「むしとりがっせん」/京芸小ギャラリー    

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