やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

伊藤慶二展  <つら>シリーズ <br>Ito Keiji Exhibition

伊藤慶二展 <つら>シリーズ
Ito Keiji Exhibition

2015年1月16日(金)〜2月21日(土)

■ 休館日
水曜日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料
アーティスト・トーク&レセプション
1月16日(金) 18:00〜19:30

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「壁顔」
2013年;  W377×D224×H475mm  陶



展示会概要
伊藤慶二は岐阜県土岐市に生まれ現在もその地で活動を続けています。その作品は幅広く、和洋食器、茶道具、造形作品など多岐に渡ります。なかでも造形作品の一群は彼の精神性を色濃く表し、1972年から現在まで続く《HIROSHIMA》シリーズや《沈黙》《尺度》《面(めん)》シリーズなどはその代表作です。本展では造形作品で2008年より制作されている《つら》シリーズの10点を展示します。


見どころ

@ 土偶や道祖神、仏像に対しているかのような尊さ
《つら》シリーズは伊藤慶二の造形作品の中でも2008年頃より始まった近作になります。本展では《つら》シリーズのなかから10点を展示します。台形や楕円を躯体にした上に、紐土でつくられた細長い鼻や線を刻んだだけの目などシンプルで抽象的な表現が特徴的です。「つら」はややぞんざいな言葉で、「面汚し」といったマイナスイメージで使われることの多い言葉ですが、そこには一筋縄ではいかない諸々を逆説的に表現したユーモアがあります。同時にもの言わぬものたちが語りかけてくるような、静謐な清らかさに満ち、土偶や道祖神、仏像に対しているかのような尊さを感じさせる作品です。

A 祈りの記憶から生み出される造形と黒陶のもつ素朴な温かみ
《つら》シリーズが生まれた背景には、1972年から現在まで続く《HIROSHIMA》シリーズ、《沈黙》《尺度》《鎮魂》《面(めん)》などの一連の作品の流れがあります。 タイトルからもうかがえるように、原爆や度重なる震災への思いと、武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)時代より行っている寺社巡りや仏像スケッチなど個人的な祈りの記憶があります。 土という素材を探求し確かな技術を身につけた制作活動は、黒陶との出会いによって、やきものの中でも造形作品での表現を選ぶようになりました。釉薬を使わずに土の色や質感を引き出した作品は、土の存在感が強く感じられ、素材の持つ素朴な温かみや迫力ある重厚感も魅力です。

B やきものの制作に活かされる油彩画の技術
伊藤は美大卒業後にデザイナーとして岐阜県陶磁器試験場(現・岐阜県セラミックス研究所)で働いているときに陶磁器デザイナーの日根野作三と出会い、自らもやきものの制作を行うようになりました。 伊藤の作品制作は、手作りのスケッチ帳に思いついたイメージを描きとめることから始まります。武蔵野美術学校で油画を学んだ伊藤は現在もペインティングの制作を続けており、2013年岐阜現代陶芸美術館では両方の作品を展示する個展を開催していずれも高い評価を得ています。


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2015年ギャラリー3会場風景

「伊藤慶二展 -<つら>シリーズ-」に寄せて

伊藤慶二という作家は、常にものの本質を問い続ける稀有なアーティストである。その孤高の精神は、町中にあっても、まるで深山幽谷に身を置く聖(ひじり)の生き様を見るようである。だから、絵画にしろ、クラフトにしろ、陶の立体造形にしろ、伊藤が創り出す造形作品はシンプルで、かつ奥が深いのである。それは、彼の純粋な魂の結晶であり、繊細な感性の発露でもある。伊藤が特定の団体に属さず、地位を求めないのも、そうした創作姿勢を貫き通すためなのであろう。まさに、伊藤の作品は彼の作家精神そのものなのである。
伊藤は武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)で油絵を学び、20代半ばより勤務した岐阜県陶磁器試験場で、クラフト運動の指導者であった陶磁器デザイナーの日根野作三と出会った。その日根野から、やきものの造形に対するデザインの重要性を学ぶ。伊藤が作陶をはじめることになった理由も、紙の上のデザインだけでは、土についても轆轤についても何も分らないことを痛感したからである。その結果、量産のためのペーパーデザインではなく、一つ一つが独立した個のデザインに行き着く。伊藤の作品は平面にしろ、立体にしろ、その基本のデザインがしっかりしている。だから、器を中心とした仕事から陶の立体造形へと移行しても、その根幹は何ら変らないのである。伊藤は黒陶と出合って、はじめてやきものによる自己表現が可能であると思ったという。そして、素材としての土の質感を引き出すために薪窯を作った。伊藤は造形物(オブジェ)に釉薬を使うことを極力避ける。釉薬で覆うことによって、ものの本質が見えなくなってしまうからである。80年代に入ると黒陶とは異なる、顔料を直接土に塗りつけるという方法で、土の質感をさらに引き出した作品へと変る。
伊藤のライフワークともいうべき≪HIROSHIMA≫シリーズは、「同時代人として伝えていかねばならないという想い」からはじまったもので、年代を重ねるごとに制作を継続する作品には、作者の被爆者への鎮魂の想いが込められている。また≪沈黙≫シリーズは、作品について多くを語ることを嫌う伊藤らしい作品で、沈黙の中にもいろんな表情があることを教えてくれる。≪尺度≫シリーズは、人が生活する上での「ものさし」を通して、伊藤自身の心の「ものさし」、その生き方を暗示しているようでもある。
近年取り組んでいる≪つら≫シリーズは、人の面(つら)、顔のことであるが、じつに表情豊かな作品群である。そこには、喜怒哀楽、老若男女といったさまざまな表情を通して、人間の在り様を問い掛けている。この≪つら≫シリーズが、東日本大地震以降に作家の内部で浄化され、やがて≪鎮魂≫や≪祈り≫といった作品に繋がっていった。この作家は、≪HIROSHIMA≫ ≪沈黙≫ ≪尺度≫ ≪つら≫ ≪鎮魂≫ ≪祈り≫といった作品を通して、常に自身の精神の浄化を繰り返してきたのであろう。故に、伊藤の作品には不思議な力が内在するのである。

森 孝一(美術評論家・日本陶磁協会事務局長)
作家略歴
1935年 岐阜県に生まれる
1958年 武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)卒業
1960年 岐阜県陶磁器試験場(現・岐阜県セラミックス研究所)デザイン室に勤務(〜’65)
同試験場にて日根野作三に師事
1963年 J.D.C.A.(日本デザイナークラフトマン協会、現・日本クラフトデザイン協会)入会(〜’82)
第1回朝日陶芸展クラフト部門出品(以後、第4回まで毎回出品)
1967年 毎日国際陶芸展前衛部門に出品
1968年 J.D.C.A.一般公募のクラフト展審査員を務める
1970年 この頃から多治見市陶磁器意匠研究所(〜2000)、石川県立九谷焼技術研修所(〜現在)の非常勤講師となる
1975年 土岐市泉島田町(現住所)に工房を建て、ガス窯を設置。J.D.C.A.理事となる
1978年 第8回世界クラフト会議  日本クラフトコンペにて「〇△□(プレート)」美術出版社賞受賞(京都)
1979年 第20回暮らしを創る’79クラフト展優秀賞受賞(松屋銀座)
1980年 土岐市五斗蒔に薪窯を築窯。I.A.C.(国際陶芸アカデミー)入会(2008退会)
1981年 第39回ファエンツァ国際陶芸展「仏足のゆくえ」買上賞受賞(イタリア)
1983年 荒木高子と2人展(サンフランシスコ)
1984年 国際陶芸展(CERAMICS×27)(ブダベスト)
1989年 岐阜県陶磁資料館、「王の祈り」美濃陶芸作品永年保存買上
1994年 滋賀県陶芸の森招聘講師となる
1998年 第5回国際陶磁器展美濃’98の専門委員を委嘱される(〜’05第7回)
ハワイ大学企画EAST WEST ceramic Collaboration招待
2000年 「うつわをみる 暮らしに息づく工芸展」に「膳シリーズ」を出品(東京国立近代美術館工芸館)
2003年 ORIVE 2003 in NY(ジャパンソサエティ)
2005年 内田繁と2人展(巷房ギャラリー/東京)
2006年 岐阜県芸術文化顕彰
2007年 第4回円空大賞 円空賞受賞
「土から生まれるもの:コレクションが結ぶ生命と大地」展(東京オペラシティ アートギャラリー)
2008年 第8回国際陶磁器展美濃・国際陶磁器コンペティション陶芸部門審査委員長を務める(セラミックパークMINO/岐阜)
2009年 個展「伊藤慶二『面』展(陶彫)」(ジェイアール名古屋島屋)
2011年 「伊藤慶二 こころの尺度」展(岐阜県美術館、パラミタミュージアム/三重)
2012年 「3.11鎮魂展(アルテマイスター/福島)
2013年 「伊藤慶二展」(岐阜県現代陶芸美術館)。地域文化功労者表彰(文科省)
パブリックコレクション
北海道立近代美術館/アルテマイスター(福島)/東京国立近代美術館/樂翠亭美術館(富山)/岐阜県美術館/岐阜県現代陶芸美術館/パラミタミュージアム(三重)/滋賀県陶芸の森/京都国立近代美術館/エバーソン美術館(アメリカ)/コンテンポラリー・ミュージアム・ホノルル(アメリカ)/ヘッチェンス美術館(ドイツ)/ファエンツァ陶磁器博物館(イタリア)/アリアナ美術館(スイス)/ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館(オ―ストラリア)/世界陶磁器エキスポ(韓国陶磁財団)/パリ装飾芸術美術館(フランス)/東京オペラシティ アートギャラリー/菊池寛実記念智美術館(東京)

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