| 2012年10月30日 インタビュー:大橋恵美(LIXILギャラリー)
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| 大橋 |
「みち」(2012)は美しい錦の帯のようです。海の珊瑚礁や森の苔のような表情もあり、日本庭園の湿気のある路地も連想したのですが、モチーフは自然ですか。
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| 神谷 |
タイトルは平仮名の「みち」です。漢字では色々な意味があるんですが、そのすべての意味を表しています。
いつも頭の中に思い描いている記憶や過去のイメージなど、自分の中に蓄積してきたものから、かたちにしてゆくことが私のテーマです。
例えば赤い部分は春霞の野山であったり、一枚一枚の花びらが集まって全体で大輪の花を表していたり、太陽が射し込んでいるイメージを表した部分もあります。微生物から花、樹木、山、太陽、空へと大きな景色に変化していく「みち」を表現しています。
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| 大橋 |
最初に全体のイメージを決めるのですか。
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| 神谷 |
つくり方は、最初に水彩画を描いたものをコラージュの様に切り貼りして実寸大の下絵をつくり、大体のテクスチャーと色を決めます。つくっていくうちに偶然現われる色や質感も生かしつつ、細かい模様やディティールの上にも何度も上絵の具で絵付けをしています。
普段から自分で撮った好きな写真をためてファイルにしていて、その中から思い描いたイメージに合うものを使ったり、また絵を描くのが好きなので、クレパスでイラストを描いたりして、それをソースにすることもあります。
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| 大橋 |
色彩が特徴的ですが、絵画でいうと黒いベースに描いているような、盛り上げた釉薬の隙間に黒い陰が見え隠れして、立体的で重層的なイメージです。
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| 神谷 |
使用する土は磁土から赤土まで色々なものを混ぜて使っていますが、基本的には赤味の強い目の粗い土が多いです。水分の少ないぼそぼそ状態の土を型に押し付けてかたちをつくっていますので、溝のような部分が自然にでき、立体感につながっているのだと思います。
桜のようなピンク色は、黒い顔料の入った土に特定の釉薬を使います。私は春霞のけぶるような淡い色彩や中間色のやわらかい色彩が好きです。今は絵具の色の種類が豊富なのですが、色数は抑えて、重ねて使用することで深さを表現しています。
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| 大橋 |
「はるのめ」(2011)は、春の芽ですか。大地の芽吹きのエネルギーを感じます。
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| 神谷 |
「はるのめ」は、台風の目と同じ春の目、芽吹くという意味の春の芽、そして窓から見ている自分の目で切り取った春、という意味も含んでいます。花がぱあっと広がったイメージと万華鏡の鮮やかな色彩がいっぱい散りばめられているイメージでつくりました。
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| 大橋 |
「このはなさくや」(2011)は、樹林のような立ち上がるかたちです。
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| 神谷 |
満開の桜を泡のように感じ、桜が空に立ち上り、やがては雲に溶けていくというイメージと日本神話を重ねました。
山の神と野の草姫の間に生まれた「このはなさくやひめ」が父神の命で、「雲を踏み、霞に乗って、紫雲にそびえる富士山に天降り、種子をまき、そこからサクラの花が咲き乱れる」という話です。
この作品を制作して、テクスチャーを活かしたかたちづくりや絵付けをしたい、また上絵付けに時間をかけたいと思うようになり、樹林のような立体的なかたちの必要性を感じなくなって、「みち」のかたちになりました。
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| 大橋 |
タイトルと作品の関係は。
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| 神谷 |
作品をつくるときにはまずイメージが浮かびます。例えば春の空気、桜が空に溶けていく感じ、陽だまりのような暖かな光に包まれる・・といったような。制作して作品がまとまってきた段階で考えます。最初のイメージに一番近い言葉をタイトルにしたり、また「このはなさくや」のように制作中に桜について調べ、偶然知って、その内容が自分の作品イメージに近かいのでタイトルにすることもあります。私は物語性を感じるような言葉が好きなようです。
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| 大橋 |
埋め尽くすような模様は装飾的ですが、影響を受けた作家はいますか。
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| 神谷 |
グスタフ・クリムトが好きです。作品に大きな物語性があって、黄金色を多用する豪華で装飾的な色使いも好きです。今年はクリムト生誕150周年を記念したクリムト・イヤーだったので、ウィーンへ行きました。ベルベレーデ宮殿、分離派会館、レオポルト美術館とどれもとても素敵で感動しました。私は最初やきものの作品に金色を使うことに抵抗があったんですが、それを使い始めたのはクリムトの影響だと思います。
他にはヘンリー・ターガーも好きなのですが、物語よりも装飾的な部分、抑えた色彩などが好きで、物語的には見たくないものでも、見ずにはいられないという不思議なところに興味を惹かれます。
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| 大橋 |
なぜやきものを選ばれたのですか。
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| 神谷 |
もともと絵を描くのが好きで美大に進みました。高校生の時、演劇部で舞台美術をしていました。そこで箱をつくったり、日曜大工のようなことをして、ものをつくることの愉しさを知り、進路を決めました。
同じ頃、名古屋松坂屋で開催されていた朝日陶芸展を見て、すごく新鮮でとても面白かったんです。始めは絵を描きたかったのですが、キャンバスに向かって描くよりも手を動かしてつくっていく方が自分には合っていると思い、陶芸を選びました。好きな絵付けもできるし、陶芸の質感のすごく豊かなところにも惹かれたのだと思います。時間のかさなり、土や釉薬のかさなりによって変化する化学反応の部分も大きくて、どっぷりと嵌りました。
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| 大橋 |
かたちはどのようにつくられていますか。
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| 神谷 |
学生時代手びねりで自分がつくるかたちが好きになれなくて、ずっと思い悩んでいました。そんな時に、無理に自分でつくるより何かの型を使えばいいと先生が提案してくれたんです。そこで地面に石膏を流して型を取り、そこに土を叩き付けてつくるようになりました。自然を模しているので当然なのですが、自然なかたちが生まれ、自分でも予期しないかたちが出来ることも面白く、自分に合っていると思います。また、平らな石膏ブロックなども使っています。型でつくる自然に生まれるかたちに魅力を感じます。そのかたちが自分らしいと思います。
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| 大橋 |
これからはどのような作品になりますか。
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| 神谷 |
学生時代の短い間でしたが金沢に暮らしてみて、九谷焼や漆や染織を自然に目にしていたことが大きく影響しているように思います。私は上絵の具でも、和絵の具を多用しているのですが、地域によっては一般的ではないそうです。九谷焼を見てから磁器も好きになり、作品で磁器土や半磁土も使うようになりました。
2012年は作品発表の機会に恵まれ多くの人のご意見、ご感想を頂くことができました。これからも自分が自然に綺麗だなと思えるものをつくり続けたいと考えています。
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/インタビュー終了//>