やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

斎藤啓司 展 −陶 Junk&Accumulation−<br>Saito Keiji Exhibition

斎藤啓司 展 −陶 Junk&Accumulation−
Saito Keiji Exhibition

2011年11月8日(火)〜12月1日(木)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク  11月8日(火)18:30〜19:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

Photo:Junk&Accumulation 2011 1.2×5m サイズ可変



展示会概要
波板トタン、錆びた鉄板、ペンキの剥げた木片が150枚、床いっぱいに整然と並べられています。波に洗われ、陽に晒され、風化したように古色のついた、これらの作品はすべてやきものでつくられています。鮮やかなペンキの残色を生かし、布地のパッチワークのようにきれいに構成された作品は、陶のやわらかさを得て、子供の積み木遊びのように、穏やかで和やかな光景をつくり出しています。
斎藤啓司は捨てられたもの、顧みる者もなく廃棄されていくものを改めて採り上げ、作品にしてその価値を再評価し、そこから新たなるコミュニケーションの場となればと制作をしています。

斎藤は、大学の法学部を卒業して教員になろうとした矢先、旅行中の宮古島で陶芸家に出会い、その自由闊達で既存の価値観にとらわれない生き方こそ、生徒に教えたいものだと考え、自らやきもので作品を制作するために京都精華大学、金沢美術工芸大学大学院で陶芸を専攻しました。
白磁土による造形に憧れた学部時代を経て、信楽や伊賀、楽茶碗のざっくりとした土に惹かれる自分に改めて気づいた2009年頃から現在の作品をつくり始めます。それは音楽でもロックバンドが、異なる個性の楽器の集まりによってサウンドが広がるように、現代美術や音楽や、幼少の頃の風景や空気感、自分自身を理解することなど、自分の好きなものを混ぜ合わせることで、生まれた作品です。
やきものでつくられた「Junk&Accumulation」に触れると、錆びてボロボロの鉄板や、風化してペンキが剥がれてくる木材の1枚1枚、ひとつひとつが、ひとりひとりの人物のように愛しく映ります。
今展では、床いっぱいに広がる陶の作品で会場が埋められます。
斎藤啓司 斎藤啓司

2011年 ガレリア セラミカ会場風景

インタビュー
2011年9月9日 インタビュー:大橋恵美(INAXギャラリー)
大橋 「Junk&Accumulation」(2011)ですが、やきもので風化のようなかたちをつくる人は少なくないのですが、斉藤さんはどうしてこうした作品をつくろうと思ったのですか。
斎藤 学部時代の作品は方法論が違ったんですが、大きな土台になるコンセプトは同じで、ゴミや廃材など一般的な価値基準からは外れているようなものいわゆる“マイナー”なものをピックアップし、僕なりの物語性や新しい価値観、そこから生まれる新たなコミュニケーションを抽出したいという思いがありました。
またアメリカ留学を機に、自身のルーツや嗜好も含め、自分なりのドメスティックな価値観に立ち返って新しい制作段階へ移行したいという思いがありました。
大橋 前後しますが、斎藤さんはどこでやきものを始められたのですか。
斎藤 長くなるのですが、僕は新潟大学法学部を卒業した後、約一年半程弘前市のヴィレッジヴァンガードという書店で働いていました。そのまま一般的な就職を目指すことに消化不良があったんです。音楽をはじめサブカルチャー的なものが好きだったこともあるし、今思うとそこでの経験や出会いが美術への大きな目覚めの一つだった気がします。
一方で、両親、特に母が特別支援学校の教員でしたので、大学在学中から専門分野以上に教員、中でも特殊教育に関心がありました。教育分野外での専門教育の修得が自分の目指す教員像に繋がるとも考えて、勤務しながら心理学科を目指したのですが、編入学試験が不合格だったのです。
合否の結果を待つ間に前から興味があった屋久島へ旅行に行っていて、不合格と知ってそのまま奄美や沖縄の離島などへ足を伸ばしているうちにお金がなくなり、宮古島のシーウォーカーショップやマンゴー農園などで1年ほど働きながら滞在しました。そこで愛知から移住していた陶芸家ご夫婦との出会いが陶芸に触れるきっかけになりました。その夫妻はグラフィティーもしていたりと、それまでの僕の持っていた陶芸家のイメージとはかけ離れていて、まず生き方が面白いと思ったんです。旅をしているうちに、教育における心理学に疑問を持ったこともあり、生き方そのものを教育現場で伝えられる美術と、作業、感覚を主とする陶芸はすごくいいなと強く思いました。沖縄には他にも面白い人がたくさんいて、音楽イベントでDJやライブ、作品展示やライブペインティングをお願いしたりと、そういう人達と一緒に音楽イベント開催などを経験できたことも大きなきっかけでした。
それで帰って京都精華大に入ったんです。当時西田潤さんがいたということが大きな決め手でした。既存のフィールドから一歩出たような、“パンク”なイメージの新しいものに惹かれたんだと思います。
大橋 そこではどんな作品をつくりましたか。
斎藤 西田潤さんや松本ヒデオ先生などの影響も受けて、まず白色へ憧れました。磁器は繊細という表現スタイルに対し、例えば潤さんは破壊的な“くずし”の要素が、白色を主とすることで神聖さを含んで、一般的にネガティブといわれる様相が違ったものとして立ち上がってくるところに魅力を感じました。新しい陶芸への方法論が高い技術を基に展開することに当時はとにかく夢中になりました。
大橋 斎藤さんはつくりたいイメージがありましたか。
斎藤 あったものがなくなる、時間的な痕跡とそこに潜む記憶や物語性など生死に繫がる気配や思想。それは陶芸に出会い、また、始めた時から感じていることです。例える時に壁の汚れやシミみたいだと自然とイメージが浮かんだり、コンクリートの肌合いや木々の風化様などと信楽焼や伊賀焼、備前の焼きしめなんかの質感が自分の中でシンクロしたり、磁器ものより土もの、ざっくりした感じが陶芸の感覚としての原点だったと思います。
年齢的には遅く美術を始めたことで中途半端では終われないという思いと、技術、表現的にもやり残した感があって、大学院へ進みました。
前後しますが2007年にアメリカに半年間交換留学をしました。異文化の表現に直で触れてみたい、好奇心やもろもろの願望があったんです。でも素焼きにラッカースプレーや油彩が当たり前で、陶芸学科にいながら映像作品をメインにしてる人がいたり、日本的価値観に支配されていた当時の自分にとっては自由すぎて面白さの反面、カルチャーショックでした。アメリカでは“potter”というカテゴライズはあるものの、一般的にセラミックアーティストという位置づけなので、制作と平行してのディスカッションやプレゼンテーションも凄く重要視されるんです。日本そのものや、日本人である自分のアイデンティティーについても考えさせられました。9.11以降の世界情勢や戦前から戦後に至る日米関係まで、ネットなんかで調べていましたね。
大学院では、自分のやりたいことを無理矢理やり通させて頂いた感があります。学部時代の反動からか、なぜ制作するのか、制作と自身が生きることとの狭間で強い思いとの戦いがあって、突き詰めていったときに、そんな自分自身の現状を理解して受容していくことが、今できることではないかと思いました。
これまでの自分のアイデンティティーを構成しているであろう全ての要素、言ったら津軽の風土で育つなかで無意識に吸収してきた風景や空気感なんかを自分なりにコラージュしたら、少しは見えてくるものがあるんじゃないかと。
大橋 「Junk&Accumulation」(2011)の登場ですね。ケミカルカラーが現れたり、色彩もカラフルになりました。「Thresold T、U」は配管がモチーフだったり、金属の錆びや木彫の磨耗した感じがよく出ていますが、やきものである必要はありますか。
斎藤 陶磁素材そのものと風化や劣化現象は自分の中で強く重なるんですよね。 “魅力的なゴミ”をつくるために一面的には美しさの追求とは乖離したようなことを、とにかく念を込めるように一生懸命やる。それが最終的にモチーフとは異質な濃度と重さを持ったものに変化するような気がしています。
大橋 「Junk&Accumulation」は構築物でなく、パーツを床に広げたインスタレーションで面白かったです。
斎藤 一枚一枚の異なる個性が、一つの大きな物語性に帰結することを目指しています。例えば音楽でいったらジャズでもクラシックでもクラブミュージックにでもいえると思うんですが、一音一音違う要素の個性が重なり合わさった時に、ひとつのサウンドとしての空間的広がりを持つように。
リメイク品やパッチワーク、地元青森の襤褸とか、1枚だと地味で無意味・無価値、汚いなどとかたづけられそうなものが、集合すると何ともいえない魅力が生まれてくるのがいいなと思うんです。
大橋 ここまできて、次はどんな作品をつくりますか。
斎藤 3.11が起こったことで、自分のモチーフがいいんだろうかと悩んだこともありました。でも、今はむしろ使命感のようなものを持つよう心がけています。自分の主張のための手段だった制作への意識が、東北をより強く意識したり、微力でも何かしら社会貢献を目指した表現活動を行えないかという思いも強くなりました。
これから大きく変動していくこの世界で、表現における悩みはとにかく尽きないですが、自分なりの作品発表、制作の方法を少しづつでも得ていきたいと思います。
作家略歴
           
1978年 青森県生まれ
2001年 新潟大学法学部 卒業
2007年 rhode island school of design(プロヴィデンス/アメリカ) 交換留学
2009年 京都精華大学芸術学部造形学科陶芸専攻 卒業
2011年 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科工芸専攻 修了
個展
2011年 「斎藤 啓司展」 立体ギャラリー射手座 (京都)    
グループ展
2011年 「トーキョーワンダーウォール公募2011入選作品展」 東京都現代美術館
「卒展セレクション展」 金沢アートグミ
2010年 「イヴの茶会 作品展」 金沢大和
「斎藤啓司×高橋康治 二人展」 galerie weissraum(京都)
2009年 「アジア現代陶芸-新世代の交感展」 愛知県陶磁資料館
「第56回ファエンツア国際陶芸展」 ファエンツア国際陶芸美術館(イタリア)
「Meet Kanazawa-2009, Dream Of Craft 金沢の工藝」 松本市美術館市民ギャラリー(長野)
2008年 「京都四芸大合同陶芸展」 元立誠小学校(京都)
2007年 「RISD ceramics triennial」 Woods-Gerry house(プロヴィデンス/アメリカ)
「第45回朝日陶芸展」 信楽陶芸の森(滋賀)他    
受賞
2011年 KANABIクリエイティブ賞
修了制作審査員特別賞 受賞(三潴末雄氏 選)    
作品寄贈先
ファエンツア国際陶芸美術館    

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