やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

甲田千晴 展 −土の記憶 刻生−<br>Koda Chiharu Exhibition

甲田千晴 展 −土の記憶 刻生−
Koda Chiharu Exhibition

2011年7月5日(火)〜8月1日(月)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク  7月5日(火)18:30〜19:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

Photo:「廻生」2011 h26×w20×d15cm



展示会概要
甲田千晴の作品は、乾いて風化したような土肌に、生長していく想像上の生物を組み合わせたような不思議なオブジェです。ごつごつとした茶色の硬い襞を刻んだ塊から、植物の芽や貝の体を思わせる部分が伸び、枝分かれしてフジツボのような断面を見せたり、古代生物のような表情をつくりだします。
特徴的な木肌のようなテクスチャーは、紐づくりで土を積み重ねることで、歳月や年輪をイメージしています。その膨らんだ造形からは、積層した時間や風化に加え、次の命を育み再生して巡る魂のようなものが感じられます。空洞である内側には土の骨格があると考え、その力が充実して外に現れることを意識したかたちだといいます。

甲田千晴

「枯鳥が待つ」2011年 h50×w75×d17cm

近作「枯鳥が空を飛ぶ日」では、木肌のテクスチャーから外へ出た部分が発展し、石膏に似た白くざらざらした質感で全体が覆われてきました。縦に伸びるかたちが横へも広がることで、新しい世界が生まれています。
甲田千晴は大学のデザイン科でセラミックを学び、工業製品とは別の自由な造形を求めて一人で制作をはじめました。最初はつくりかたもわからず、本来上に積む土を下に向けて積んだり、試行錯誤しながらかたちを追い求めました。その後、信楽陶芸の森や多治見の意匠研究所に進んで釉薬や技術を学び、朝日陶芸展奨励賞、岡山県新進美術育成 I氏賞などを受賞。これまで中国、関西地方中心に積極的に発表を続けています。今展は東京初個展になります。どうぞ会場でご覧ください。
甲田千晴

2011年 ガレリアセラミカ会場風景

インタビュー
2011年5月15日 インタビュー:大橋恵美(INAXギャラリー)
大橋 2009年のギャラリー白の個展で初めて拝見したのですが、完成度の高さが印象的でした。2005年に大学を卒業されていますが 、これまで出会えませんでしたね。ご出身はどちらですか。
甲田 岡山です。岡山県立大学デザイン科のセラミックデザインコースで陶芸を学びました。卒業制作の「八億年後の生命体」(2004) をもとに制作した、生命体シリ―ズの「女と男」(2005)を国際陶磁器展美濃に出品したのが最初の発表です。
大橋 今と作品がかなり異なりましたね。もともとは、どういうものをつくりたくて陶芸をはじめたのですか。
甲田 伝統工芸展を見て工芸をやりたいと思ったのが最初です。
大学ではセラミックデザインコースなので、図面を書いたり、大量生産を目的とした石膏型制作の授業がほとんどでした。テキスタイルデザインの授業で布で立体をつくった時に、自由な表現ということを意識し始め、土でもできるのではないかと思い、授業とは関係なく四回生の春休みに1人でつくり始めたんです。
独学なので、つくりたいかたちが思うようにつくれず、失敗しながらの手探り状態でした。机や椅子で支えながら下に向けて土を積んでいったり、屋外展示の作品にはペンキで色付けをしたり、耐火温度の限界もわからず窯の中で倒れてしまったり。今思うとやりたい放題でしたが、楽しかったですね。そんな感じのまま大学を卒業した後、陶芸にも造形というジャンルがあることを知り、もう一度しっかり制作したいと思って、2005年に信楽陶芸の森に行くことにしたんです。そこから今のスタイルに至っていると思います。
大橋 無我夢中につくり続ける甲田さんのエネルギッシュさを感じます。モデリングの感覚でつくりはじめたのかと思いますが、土のどういう部分が自分に合っていたのでしょう。
甲田 土の一番よい部分は、エッジが出ることと早くかたちの結果が出ることですね。木やガラスもやってみたのですが、ガラスは熱いので直接触れないし、コールドガラスだとすごく時間がかかるし、木は硬い木を選んだのか腱鞘炎になったり。模索する中で土が一番自分のつくりたいかたちを早く見ることができる素材だったんです。 この頃は釉薬に興味を持っていなくて、必要ならば買えばいいと思っていたのですが、多治見の意匠研究所に行ってからは土の成分を知ったり、釉薬の面白さに気づいたり、すごく作品の幅が広がりました。
大橋 甲田さん独特の木肌のような表現はいつ頃から始まったのですか。
甲田 「トムライ」(2005)からです。歳月を表現するのに年輪をイメージしたのと、技術的な面では、つなぎ目がわからないようにしたくて、こういった表情になりました。
「トムライ」は生物が死んでもまた次の生命体の栄養分になる、ネガティブな死ではなくずっと続いていくというコンセプトでした。このトムライの後から土の骨格というか、空洞である中の重量感やかたちをすごく意識するようになりました。それまではただ表情を追っていた感じでした。
大橋 土の骨格という言い方も面白いですね。風化した乾いた表情のなかに、次の命を育んでいる、木魂のようなものが感じられます。
甲田 「トムライ」のインスタレーションの後の数年は、全体で見せるのではなく1点1点で見せて、展示の時には台に載せることを前提に作品をつくっていました。
しばらくすると違和感がでてきたので、もう一度インスタレーションをしてみようと思って制作したのが犬島の「積層される時間」(2009)です。2003年の台風で床上まで海水に浸り、腐った畳と床板を剥がした部屋が展示場所でした。積み重なった時間の重みを表したくて、床下の地面から木が生えて植物が再生していくイメージです。この作品は陶器ではなく、ヤシの木を拾ってきて配置したのかと思われたりしましたが、素材よりも時間を感じてもらえる空間をつくりかったんです。
大橋 甲田さんの作品は1点でも凝縮した力がありますが、インスタレーションは世界が広がるようで楽しいです。空間全体に甲田さん独特の詩情が漂っています。
甲田 でもこの後また、やはり作品一点一点もしっかりしていないと私の中では作品が成立しないと感じ、ギャラリー白(2009)の展示に臨んだんです。台を使った作品でも表現したい空間がつくれると思えた展示でした。
そして、茶色い木肌のテクスチャーからはみ出る部分が大きくなってきた頃、ひとつひとつに自分の制作に対する想いが擬人化されているのではないかと思い始めました。
「これが私の作風だ」と勝手に足枷をつくっているような気がして、「静止した時間」(2009)も制作に迷う心情だったり、紐づくりから出てくる部分も自分を縛っているところから出たいという気持ちの表れだったような気がします。
何のために擬人化しているのか疑問に感じてきて、具象化していた頃に少し戻ろうとしたのが、「枯鳥が空を飛ぶ日」(2010)です。
釉薬やテクスチャーという陶芸の面白さに気づいてから、それに囚われていたと思いました。最近また感情や思想を優先してつくっていきたいと思うようになって、作品もタイトルも具体的になってきました。
木肌のテクスチャーに縛られていたと思ったので、しばらくは使わずにいましたが、私はこれがやっぱり好きだと思って最近はまだ使っています。
大橋 展示と作品の在り方、技法とコンセプトの間を行きつ戻りつしながら、「枯鳥が空を飛ぶ日」(2010)のような新しいかたちが生まれてくるのですね。最近は人体もつくられています。
甲田 造形の骨格を意識するようになってから、想像上のものの骨格をつくり続けるというのには限界を感じて、一度現実的なものへ戻ってみたかったんです。想像上の生物だと自分が想像する以上のことは考えなくてもよいのですが、人体だと現実的なことも意識しないといけないので、逆にそこがとても楽しめたんです。
大橋 好きな作家はいますか。
甲田 最近は日本画を見に行くことが多くて、岩絵具や和紙の質感が好きなんだと思うんですけど。その中で印象的だったのは、京都で見た三瀬夏之介さんの作品でした。実際に描いているところを拝見したんですが、とても迫力があって日本画というジャンルにいながら自由なのが羨ましかった。私は自分で自分を縛っているところがあるので、自由になりたい気持ちが強いのかもしれません。
大橋 陶芸は制約が多いと感じることはありませんか。
甲田 それは以前はすごく苦だったのですが、どの素材でも良い面と悪い面があるし、陶芸の焼きあがった釉薬や土の質感を求めるためなら仕方がないと、最近ようやく思えるようになりました。
大橋 これからも楽しみにしています。
作家略歴
1982年 岡山県に生まれる
2005年 岡山県立大学デザイン学部工芸工業デザイン科 卒業
2006年 信楽陶芸の森 アーティストインレジデンス(4ヶ月)
2008年 多治見市陶磁器意匠研究所 修了
2011年 現在、多治見市にて制作
グループ展・公募展
              
2005年 国際陶磁器展美濃(岐阜県現代陶芸美術館・岐阜)
Creaters File U(Slogadh463・岡山)
朝日陶芸展(堺市立文化館・大阪など)
朝日現代クラフト展(大阪)
2006年 女流陶芸展(京都市美術館・京都)
2007年 CIFACA CIFAKA EXHIBITION(cifa-cafe・岡山)
ヒトハナ展(ギャラリーVOICE・岐阜)
2008年 岡山県新進美術育成 I氏賞(岡山県天神山プラザ・岡山)
三人展"重なる色香"(ノリタケの森ギャラリー・愛知)
日韓交流陶芸展"CONTACT act7"(ヘイリー芸術文化村・韓国)
Jamin(エスプリヌーボーギャラリー・岡山)
2009年 一年後展(ギャラリー陶林春窯、岐阜)
第6回犬島時間 (犬島内旧郵便局舎・岡山)
2010年 やきものの現在Y(ギャラリーVOICE・岐阜)
陶芸の提案(ギャラリー白・大阪)
Naturals, Not By Nature"(エスプリヌーボーギャラリー・岡山)
Exhibition of Graguates -受け継ぐもの、作り出すもの- (セラミックパークMINO1F・岐阜)
2011年 陶芸の提案(ギャラリー白・大阪)
BEGEGNUNGEN -Deutschland&Japan- (TKV天理日独文化館・ドイツ)
賞暦
    
2006年 朝日陶芸展 奨励賞     
2008年 岡山県新進美術育成 I氏賞 奨励賞     
収蔵
ヘットジン美術館(ドイツ)、岡山県英田郡西粟倉村     

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