やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

黒川 徹 展 −銀黒陶 有機体の幾何学−<br>Kurokawa Toru Exhibition

黒川 徹 展 −銀黒陶 有機体の幾何学−
Kurokawa Toru Exhibition

2011年4月6日(水)〜4月28日(木)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク  4月6日(水)18:30〜19:00

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ホロスロイデア  2010 H55×W55×D50cm



展示会概要
黒川徹の作品は黒く燻銀に輝く、幾何形体の陶のオブジェです。いずれの大きさも80cm幅ほどあり、惑星や結晶体をイメージさせるような美しいバランスをもった、不思議な存在感に満ちています。
六角形や円を小さなパーツとして繰り返し繋げることで、ひとつのかたちをつくり上げていきます。全て手びねりで、土を下から積み上げながらつくられるかたちは、幾何形体の明確なコンポジションの中に、ゆるやかなラインのエッジを連ね、巻貝がつくられるプロセスや、風に広がる砂紋のような、時間や自然の造形美を想像させます。輝きを内に秘めた黒色の静かな重さ、かたちのムーブメントがつくりだすダイナミズムには迫力があります。
黒川 徹 黒川 徹

黒川 徹 黒川 徹

黒川徹は筑波大学の彫刻専攻をへて、京都市立芸術大学 大学院で陶芸を学びます。幼少から編み物や籠編みが得意だった少年は、土でつくる空洞の紐を網目状に積み重ねることでできる空間感覚や、植物や珊瑚の生成方法に類似した手法に心を奪われます。
2007年には青い珊瑚礁をイメージした大きさ165cmの網状の作品で長三大賞を受賞しました。
そのシリーズの後、2008年には黒燻銀に輝く「アイレ」シリーズが制作されます。「アイレ」とはスペイン・フラメンコで「間」を意味する言葉で、フラメンコギター奏法ピチカートと黒川の制作方法の類似点から名づけられました。「アイレ」の穴の開いたリボンを増殖するように重ねて成形されるかたちは、内側と外側の存在を意識する陶芸のひとつの在り方への、重力をコントロールすることの多い彫刻からのアプローチのようにも見受けられます。
今展では「アイレ」がさらに変容した新作「ホロスロイデア」シリーズが登場します。会場には80cmサイズの球を主とした幾何形体3点が展示されます。端正な幾何形体が宇宙のように深く黒いかたちとなって、現れます。東京では初個展の開催となります。
黒川 徹 黒川 徹

黒川 徹

2011年 ガレリアセラミカ 会場風景

インタビュー
2011年1月14日 インタビュー:大橋恵美(INAXギャラリー)
大橋 黒川さんの作品は、2007年の長三大賞受賞から2010年多治見のギャラリーヴォイスへと変化しました。まず長三大賞の時はどのようなイメージでつくられていたのですか。
黒川 僕が考えていたのはイメージというよりかたちの成り立ち方なんです。手びねりで中が空洞のチューブを下から積み上げていきます。クモが巣をつくるような感覚で、チューブが枝分かれして融合するということを繰り返していく。そのような方法論的なところから始まった作品です。
大橋 色の青さが不思議でした。それまで色は全然使われていなかったし、これ以降も使っていないですね。
黒川 僕はやきものに対して飽くまでも一つの造形素材と思っていたので、色をつけることに抵抗はなかったんですね。焼くことも恒久的な素材に変わるという位に考えていました。でもこれ以降色を使うかどうか悩みました。かたちのことを考えると色は邪魔なのですが、もっとも人の観念に影響を及ぼすのも色ではないでしょうか。
大橋 なぜやきものを素材に選んだのですか。
黒川 彫刻がやりたかったので筑波大学彫塑専攻へ進んだのですが、2年生の時の陶芸の授業で陶芸に興味を持って、それから京都市立芸大へ行きました。それは内側を空洞にしてつくっていく、そういう造形のあり方に興味を持ったからです。一般的な彫刻の概念とは違うと思いました。
大橋 海の珊瑚礁を連想しました。かたちや網目のパターンは最初に考えますか。
黒川 最初のうちは緻密なプロセスの積み重ねというところに意義を感じていました。単純作業に没頭しているんです。ただ、意識的にそのようにすることで少しずつ作品が変化していく様をなるべく客観的にみている。すると、どのような行為を繰り返すかによって細部のパターンが決まっていきます。全体のかたちを考えるのはそれからです。
大橋 土の感触に出会ってからそうなったのでしょうか。
黒川 そうです。増殖的につくっていくという考え方に変わっていきました。
大橋 作品にモチ−フはありますか。
黒川 木の枝、蜂の巣や石ころを拾ってきたりすることはあります。でもなるべくそのことが直接作品に出ないように注意しています。かたちを土に押し込めるというのでは自然物の魅力にはとても及びません。植物が細部の拡張で成長していく、それと同じようなプロセスをたどって作品を作っていきます。
網状の構造のシリーズはほとんど珊瑚の名前からつけています。「セリオイド」(2006)「ファセロイド」(2007)「プラヌラ」(2008)は珊瑚の学名です。「ファセロイド」は枝状に分岐して生長する珊瑚のかたちです。
大橋 3mの大きさがありますが、実際の「セリオイド」もこんなに大きいんですか。
黒川 そうです。個体と個体がくっついて生長し、大きな群体になります。「プロコイド」(2006)も個体と個体が離れた状態の珊瑚で、作品ではパーツとパーツを鉄棒で繋いでいます。
大橋 先に珊瑚の成育方法を知識として持っていたのですか。
黒川 人からも言われ、後で調べて知りました。自分でも驚きでした。
大橋 燻銀の黒い色彩とシャープな線の「アイレ」(2008)は何の名前でしょうか。
黒川 スペイン語で空気です。フラメンコの用語で、間や空を大事にするので、それを使ったんです。中学生の時にわずかな期間だったのですが、フラメンコギターをやっていた時があった。ギターは管楽器のように伸びやかな音が出せない。単音と単音がバツバツ切れるんです。それで呼吸を繋げるためにいろんな技法を駆使するんですが、それが陶芸と似ていると思いました。もともと土俗的な音楽や陶芸もそうですが、すごく惹かれます。
「アイレ」シリーズも、技法的には同じで下から積み上げています。シャープなところは後から削ってエッジを立てています。ただ、作業の繰り返しだと全体のダイナミックさが出てこない。作業のプロセスの積み重ねに違いはないのですが、少しずつ構造をずらしていく。そういうことをすることで呼吸を繋げていく。動きに生命的なイメージがでてきた作品です。
考え方の転機としては「外延」という言葉が気になるようになったことです。言葉の綾なのですが、やきものは収縮する、窯の熱で焼き固めるというのはすごくネガティヴだと考えた。増殖させながらつくっていくことと、削ぎ落としながらつくっていくことから、「外延」という言葉で、内側と外側という概念をなくそうと考えました。稜線を出したのはなぜかと言うと、内側も外側で、外側も内側であるという関係性にしたかった。
大橋 増殖する幾何形体以外にも、「禿山に月」(2009)、「森の底」(2009)という有機的な雰囲気の作品も同時期につくられていますね。
黒川 これはイメージの中で作品をつくり上げるという作品です。燻銀や土の焼き肌は物と空間とを隔てる境目にあって、人の想像力を喚起するもののように思えました。作品と空間とでトータルな世界をつくる。詩的なイメージを取り込み出したのはこの作品からです。
大橋 技術的にも惹かれてしまいますね。
黒川 重量をコントロールして、作品がうまくバランスをとって自立しているところを狙ってつくります。見た目には危ない感じがしますが、実際には物理的に強い構造をしているんです。
「ジャバラ」(2009)から、作品のサイズも大きくなり、自分でレンガを積んで野焼きをするようになりました。作品を人と同じ地面に自立させたいという思いからです。
大橋 「アウリキュラリアの星」(2010)も直径80cmあり、迫力があります。継続して黒川さんの幾何形体への憧れのようなものを感じますが。
黒川 彫刻をやっていたことと関係してくるのですが、まずモチーフを模倣するというところから脱したかった。そういうあり方に疑問を感じて、かたちを真似するのではなくて、かたちがかたちとして成立している理由。例えば、構造の単位の小さなブロックと大きなブロックがあったら、それを組み合わせていく。またブロックと稜線との関係性に法則をつけていく。遺伝子情報を組み込むようにして自分だけの理論をひとつひとつ積み上げていく。それでひとつの作品につくり上げるようにしたんです。
大橋 小さい時から何かつくるのが好きだったんですか。
黒川 今でも手芸的なものがすごく好きです。編み物とか、かごを編むとか。
大橋 好きな作家はいますか。
黒川 彫刻家だったらイサムノグチか安田侃かな。素材を生かすタイプの作家が好きです。イサムノグチもやきものをやってから作風が大きく変わっている。どこか日本的なものを感じさせることにも惹かれます。
今思うと自分は、日本的な自然観に惹かれて陶芸を選んだのかなと思います。
作家略歴
   
1984年 京都府生まれ
2007年 筑波大学芸術専門学群美術主専攻彫塑コース卒業
2009年 京都市立芸術大学美術研究科修士課程工芸専攻陶磁器修了
個展
2009年 「アイレ」(ART SPACE 其の延長/京都)
2010年 「禿山に月」(アートスペース虹/京都)
主なグループ展
2006年 緑道ギャラリー小さな彫刻展vol21「通っていいよ」(日本都市センター/東京)
2008年 ART UNIV.2008(元立誠小学校/京都)
2010年 京都工芸ビエンナーレ-京都府美術工芸新鋭展(京都文化博物館)
やきものの現在-土から成るカタチ(ギャラリーヴォイス/岐阜県多治見)
ECHO TOUR 2010(重要文化財 京都府庁旧本館)
アジア現代陶芸展(弘益大学校/韓国ソウル)
(08年/中国佛山市石湾、09年/愛知県陶磁資料館)
風と土のふれあい芸術祭−Artist in Residence at IGA−(旧矢持小学校/三重県伊貸市)
第10回 大分アジア彫刻展(朝倉文夫記念文化ホール/大分県豊後大野市)
受賞
2007年 長三賞現代陶芸ビエンナーレ 長三大賞
港で出会う芸術祭・神戸ビエンナーレ/現代陶芸コンペティション 准大賞

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