やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

伊東靖和 展 -陶 記憶の中のいきものたち-

伊東靖和 展 -陶 記憶の中のいきものたち-

2010年4月6日(火)〜4月27日(火)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク  4月6日(火)18:30〜19:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

Photo:『scarab』w25×d38×h24 2009 撮影:末正真礼生



展示会概要
ぬめぬめと光る内臓に似たひもで胴体を覆われた、巨大なトンボ。幅190cmの羽を広げ、たくさんの目玉と、触覚とも体液を吸う口ともつかない管状のものを顔いっぱいに蠢かす『dragonfly』 を見るとき、多くの人がぎょっとすることでしょう。ぐちゃぐちゃとからまった脚と身体はくっついて一体となっています。重機関車を思わせる全身は200kgの重さです。小さな昆虫を目にして感じるすごさをかたちにしようとして、この大きさになったのだと話します。
伊東靖和

dragonfly 2009 w190×d180×h45

伊東靖和
伊東靖和の作品は、不気味ないきものの生命感が迫ってくるオブジェです。
人体の臓器、乗り物、さらにバイクと昆虫、イチゴとうさぎ、戦車と乳母車など、いくつかのイメージの組み合わせを行ない、そのときどきで惹かれるものをモチーフに新しい造形物を生み出してきました。その核には、誰もが抱くような子供の頃の、封じ込めておきたいような思い出や純粋な怒りといった感情があるといいます。陶芸をはじめてから、積み上げて大きなものをつくる挑戦への楽しみを感じていた伊東ですが、最近では小さなものに生命の精緻さを表現しようともしています。荒削りでダイナミックな迫力と、思わず目をそらしながらまた見つめてしまう生々しいかたちを、ぜひ会場でご覧ください。今年大学院を卒業したばかりの作家の初個展となります。
伊東靖和

sea slug 2009 w20×d52×h11

伊東靖和

scarab 2009 w25d38h24cm

伊東靖和

slug beetle 2009 w45×d76×h26  

伊東靖和

2010 INAX ガレリア セラミカ会場

インタビュー
2010年2月9日 インタビュー:大橋恵美 (INAX文化推進部)
大橋 『dragonfly』(2009年)を拝見して展覧会をと思いました。技術にもまだまだ荒削りなのですが、その怖いもの知らずなダイナミックさに惹かれました。
伊東 ありがとうございます。
大橋 最初から大きい作品をつくっていますね。
伊東 そうですね。つくりたかったですし、大きな作品は制作過程のモチベーションや達成感もすごく大きくて、それが作品にも強く出ていたと思います。
大橋 先生から、大きすぎて割れるかもしれないとは言われませんでしたか。
伊東 言われても、あまり気にならなかったというか、壊れたらそのときに考えようと思っていました。つくった後になぜひびが入ったのか先生にレクチャーして頂いたり、先輩から技法など教えてもらっていました。
大橋 つくりかたとしては、最初にスケッチを描いて下から積んでいく。作品は周りから気持ち悪いと言われませんか。
伊東 はい。でも僕は褒め言葉だと受け取っています。気持ち悪いって言われるのが、すごく好きなので。
大橋 小さい時からつくることが好きだったのですか。
伊東 単純に、自分でつくりたいという気持ちが強くて高校3年くらいから本格的に美術の予備校に通い始めました。その時に受験の課題として立体でやった粘土がすごく好きで、工芸などの粘土を専門に使うところに行こうと。
大橋 陶芸は、今は美術の技法のひとつと捉える若い方も多いようですが、伝統のある分野でもあります。釉薬などの技法についてはどう思っていましたか。
伊東 あまり知りませんでした。知らなかったからこそ思い切ったものをつくれたのかもしれません。釉薬を学んでからも、まずは自分のつくりたいものありきで、作品があってこの釉薬が必要というように考えています。
大橋 最初の作品が『veil』。その後に、人体の臓器のような『居場所』ですね。
伊東 このときは人体に憧れていました。『居場所』は人体の鎖骨から胸骨、あばらにかけてのフォルムがカッコいいなと思って。
うつわを解釈してつくるという課題で、放置された死体をうつわとして、その養分で一輪だけ花が生えていくという発想でした。一輪専用の花器なのでペンペン草が1本天辺に挿してあるんです。
大橋 『アブストラクト・バイク』は4年生のときの作品。実際に乗ることもできるのですか。
伊東 乗れます。この頃は機械や乗り物に惹かれていました。やきものは使えるものばかりで、乗り物とかをつくっている人がいないと思いましたし、どのくらいの大きさまでつくれるのか確認したかったんです。
大橋 次が『竈馬媒駆』(カマドウマバイク)。昆虫少年の片鱗が見えるような。
伊東 好きでした。カマドウマは気色悪い昆虫ですが、よく見るとかたちがすごくカッコいいんですよね。小さいのによくできている。
大橋 『ラビット夫人』と『イチゴうさぎ』はちょっと変わった作品ですね。
伊東 『竈馬媒駆』もそうでしたが、この頃は複数のモチーフを組み合わせて新しい造形をつくるのが面白くなり始めた時期でした。イチゴとうさぎですが、イチゴの表面ってすごく気持ち悪い。そして僕にとって、うさぎはかわいいものの代表的な存在なんです。かわいいものには口にしたいという衝動がある。思わず口にしたいのはイチゴ、という連想です。
大橋 『溺愛乳母車』はいつの作品ですか。
伊東 大学院1年目です。乳母車と戦車を組み合わせました。うさぎは乳母車としてかわいく見せるために使っています。電車の中で見かけた赤ん坊を乗せた乳母車に対して、子供が見世物にされているようなイメージがあったんです。ちょうど赤ん坊が巻き込まれる事件が起きていたこととGPS携帯が流行したこともあって、母親のための赤ん坊を守る過保護な乳母車みたいなのをつくりたかった。
大橋 『dragonfly』も組み合わせた新しい造形づくりの流れですね。私は『ザ・フライ』という映画を連想しました。歪で気持ち悪いのだけど、SF的な感じもある。どんなものを目指していましたか。
伊東 自分から見た昆虫をつくりたいと思いました。昆虫って小さいけれどすごい、その迫力のイメージをかたちにしたかった。
大橋 トンボには軽やかなイメージもありますよね。土とは思えない軽やかな表現をしようする若い作家も多いなか、真逆をいっている伊東さんが面白い。
伊東 実物を見たときにはっと感じたもの、自分にとっての迫力は、この大きさでないとつくれない。つくっているうちにこの大きさになったのではなく、初めからこの大きさでと思っていました。
学部生の頃は自分の思い出をベースにつくっていて、これは、小学校のとき同級生がトンボの羽をむしって遊んでいたのが忘れられず、不憫だな、トンボが復讐したらどうなるだろうと思ったんです。
大橋 子供のときの怒りがずっと残っていて、その激しさが伝わって迫力になっているのもかもしれませんね。これに実際の昆虫の精緻な密度が加わったらもっと怖さがでる。
修了展の3点は50センチくらいの大きさで、本当に生き物の、命が生まれるゆえの精密さみたいなものが分かってきた感じがします。
伊東 『dragonfly』をつくっていたときは、自己満足の部分がすごく大きかったと思うんです。限界に挑戦するのを楽しんでいたのかもしれません。作品の完成度とは別に、とにかくつくりたかった。でも、人に対して見てもらうことを考えると、つくっている楽しさといった気持ちは、人はあまり見ないんじゃないかと。もちろんそれも伝われば一番いいんですけど、自分の中の自己満足かと思ったら、あまり大きなものをつくりたくなくなった。自己満足から離れ、本当に作品として成立するものをつくろうと、小さくしてみました。『slug beetle』という作品は、「もし、人間から好かれているカブトムシに嫉妬をしたナメクジがいたなら」というイメージを膨らませてつくったものです。これはモチーフの立場に立って人間を意識して見てもらえるように、と考えてつくりました。
大橋 今回は細かく手が入れられましたね。
伊東 そうですね、でもストレスもありました。やっぱり大きなものを下からつくっていくときの楽しい感じは全然ないんです。強いて言うなら、最初に塊でつくってそこから自分がイメージする形に削り出していくところに別の楽しさがありました。
周りからも、このサイズでつくるならもっと密度をあげろと言われました。このサイズの作品の密度は、大きなものとはまた別の問題で、そこがまだ僕にはわからない状態です。
大橋 ダイナミックな気持ち悪さは持ち味だと思います。これからもどんどんつくって発表していってください。
作家略歴
         
1985 埼玉県出身
2008 多摩美術大学美術学部工芸学科陶専攻卒業
2010 多摩美術大学大学院美術研究科工芸陶研究領域修了
グループ展
2008 多摩美術大学美術学部工芸学科卒業制作展(青山スパイラル/東京都港区)
「みずなみ陶土フェスタ」クレイオブジェコンテスト2008 グランプリ受賞 (グループ制作・岐阜県瑞浪市)
日中韓現代陶芸-新世代の交感展-(石湾陶瓷博物館/中国佛山)
第2回多摩美術大学大学院各専攻領域合同展示・公開講評会「ノーボーダー展」     
2009 「福岡と東京の作家展」(ギャラリー近江/東京都中央区)

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