やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

藤井実佳 展 -陶 記憶の生物-

藤井実佳 展 -陶 記憶の生物-

2009年4月7日(火)〜5月2日(土)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク  2009年4月7日(火) 18:30〜19:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif PDF 89KB ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

Photo: 「light blue creature」 2008 h 45×w90×d35cm 半磁土 顔料 週刊漫画 



展示会概要
藤井実佳さんの作品は、積層した薄いチップが独特の華やかさをかもし出す、陶のオブジェです。薄い陶のチップは5cm程の楕円形で、作品全体や一部分を鳥の羽毛か、藁で編んだ網目のように密に覆い尽くしています。チップは青やピンクの淡い色彩のグラデーションに色分けされ、羽ばたくような軽やかさを感じさせる一方で、満ち溢れんばかりに過剰に密集したさまが、蠢きそうな生物の生命力を感じさせます。
艶やかで、砂糖菓子のような甘い雰囲気と儚さを持つかたちが、固く乾いた半白磁土に映える作品です。
藤井さんはこの楕円チップを、少年ジャンプなどの漫画雑誌に泥しょうを塗りこんだ後、パーツに刻み、焼成してつくります。時にはレースペーパーも使用し、表情により装飾的な繊細さをつくり出します。
藤井実佳
藤井実佳
藤井さんの最初のシリーズ「my color plants」では、花束や小さな生き物を連想させる有機的なかたちをベースに、密集したチップが別の生物のような迫力を与えていました。ベースになる有機的なかたちは、植物や昆虫、動物のかたちに、自己の心象風景を重ね合わせてつくっています。
藤井さんは2009年3月に大学院を修了する若い作家で、最近では「楽園からの開放」という作品で、また新しいかたちにもチャレンジしています。
今展では新旧合わせて約7点ほどを展示する予定です。藤井さんの東京での初個展となります。春風のように明るく華やかで、躍動感あふれる作品をどうぞご覧下さい。
藤井実佳 藤井実佳

Photo:ガレリアセラミカ会場 2009

インタビュー
2009年2月9日 インタビュー:大橋恵美 (INAX文化推進部)
大橋 今、藤井さんは大学院修了制作展の直前で、その後にセラミカで個展を開催して頂くわけですが、新作「楽園からの開放」を展示する予定でしょうか。
藤井 はい、その1部を持ってきます。
大橋 私たちは藤井さんの「my color plant」(2008年)を拝見して展覧会をお願いしたのですが、新作ではすごく変わってしまった気がしますね。 今までの展示台の上に乗せる作品から、足までつくった作品になっている。これはどういう考え方ですか。
藤井 これはギャラリー射手座に出した時に展示台の存在が強過ぎて、そこばかりに目がいってしまったので、できればこれを外した状態で作品を見せたいという気持ちから、展示台を使わずに制作しようというのが元になっています。地から生えてくるかたちみたいなものをつくりたかったんです。
大橋 展示台は私達の中では見る時に記号化されて、外して作品を見ていると思うんです。それと新作は脚が四つ足や猫脚のようなかたちで、かなり意味を持って来ていると思いますが。
藤井 この展覧会の時から大分考え方が変わって、作品に物語性を持たせたいと思うようになったんです。お話の一頁のような展示風景にしたい。物語と挿絵のようにこの作品があって欲しい。
大橋 その物語はどんなものですか。
藤井 全部自分の中にあるものです。自分の中の思いを開放して作品にしているので。
大橋 「my color plant」の時はそうではなかったんですか。
藤井 自分の中にあるモヤモヤしたものを抽象化するというコンセプトでした。 それが段々複雑になっていったんです。「my color plant」にも順番があって、最初は植物だけだったのが、植物と虫になり、それが動物と植物へと膨らんでいったんです。 自分でも訳がわからないでつくっていたので、つくってしまった作品を見て、私は今こういうことを考えているのかと思ったくらいでした。新作では開放するというだけでなく、きちんと物語を先につくりたいと考えたんです。
大橋 作品をつくる時点では展示台を意識していないですよね。
藤井 そうですが、見せる時にはこの位置では低いから展示台を使うんですが、自分では植物だから地面から生えている感じが欲しいんです。 「楽園からの開放」は動物といろんな自分の中にあるもの、自分像なんです。
大橋 自分像も「my color plant」では抽象化しようとしていたのに比べて、未だ違和感があるように感じます。
藤井 :見る人に押し付けがましく言うのではなくて、こういう風景を見て欲しいというのもあるんですけど。新作をつくっている時は楽しくて。
大橋 「my color plant」は藤井さんらしくつくった最初の作品だったと思うんです。その新鮮さが考えてつくったという作品とは違うのかもしれません。これらはつくる時に苦しかったんですか。
藤井 つくり始めは技術的にぎこちなくて、テストも何回も重ねている状態でした。こちらは技術もついて、プラス自分の思っていることをやってみようと思って。余裕が出て、物語性とか自分の訴えるものを込めて制作できたんです。
大橋 でも、藤井さんが観客に押し付けようとしていなくても、独特の脚のかたちやチェーンで結ばれていたりと、結果的に物語性を押し付けることになっていませんか。最初の作品にはそういうところが一切なかったです。最初の作品はどうやって出来たんですか。
藤井 最初はドローイングを描いてつくりました。
大橋 藤井さんの作品は誰にも似ていないと思いました。 でも、写真と実作品にはギャップがありますね。もっとパノラマティックなものを想像していましたが、意外と小さいですね。あと襞や線の凹凸が特徴的ですね。
藤井 淡い色彩であったり、土をチップにして重ねてかたちをつくるやり方であったり、 そこには藤井さんが編み出してきた力がある。 粘土だからいくらでもかたちを成型したり、ひねり出していけるのに、それをチップに置き換えたのはなぜですか。
大橋 もともと層になっているものが好きで、課題で「ディティールをつくる」というのが出た時に、層を粘土でつくってみようと思って色々試してみたんですけど、仮にチップでつくってみた時に、粘土か何で出来ているかわからないところに惹かれたんです。焼いた後の紙のなんともいえない脆さにも。 これらは週刊マンガ紙とレースに泥しょうをつけて焼いています。この紙の厚さが一番良かったです。「楽園からの開放」は大学院の2年間しかない、大きな窯が使えるうちにできるだけ色んなことをしたいと思ってつくりました。
藤井 ここになるまでには私も色々あったんです。陶を始めた時は、どうしても大きなものをつくりたかったし、オブジェだったら余計そういう方向へ行きたいですよね。でも実際には自分ひとりではつくれない。だったら、小さくても1点を完璧にしたいと思ったんです。それに古美術に興味があって、自分の身近に置いたり、愛でたりと、身の回りで楽しむものの大きさというか、そういうものをつくりたいという感覚もあります。
大橋 自分の中ではこの次の作品は浮かんでいますか。
藤井 この後ヨーロッパ旅行に行くので、一回自分の中でクリアにして、色んなものを見てから新しく作品をつくっていこうと思っています。
大橋 藤井さんはどうしてやきものだったんですか。
藤井 小さい頃から粘土遊びが大好きで、粘土のなんとも言えない感触が大好きで、自分の思うままに造形できるから。素材から入って、それにやきものって色とか留めて、絵画みたいに色褪せることなく100年でも残るから。
大橋 藤井さんは京都の古い歴史が残る場所で育っていますよね。身近にあった古いものの中で、やきものの存在価値が高かったんですか。
藤井 陶器って重くって高級感があるので、なんとなくそこに惹かれていました。観光地などに行くと反対にチープなやきものがあるじゃないですか。でも私は重くって高級感のあるやきものに惹かれて陶芸をやってみたいと思ったんです。
大橋 製作の過程で窯に入れることはどうですか。
藤井 窯まかせなところがあるじゃないですか。 私はそういう、いちかばちかかみたいなものが好きなんです。出てきたものと対面してどうしようかなと考える時間もすごく好きです。 私の作品は焼く前は週刊ジャンプの紙の赤とか黄色の色なんですけど、出てくるとこういう色になるんですね。
大橋 好きな作家はいますか。
藤井 青木克世さんです。
大橋 青木さんの作品は最初からスケール感がすごかったです。構成力があろうかなかろうか、あの大きさでなければ駄目なんだという意気込みの作家でした。 藤井さんはやきものとの出会いが、重くて立派という意識で始まっていて、やがてアンビバレンツな薄くてはかないかたちで出てきました。
藤井 私はやきものの技術にプライドを持っているというか。他の分野にも技術はあるんですけど、やきものの技術ってすごいなと思うんです。
大橋 そこがやきものの悩ましいところですよね。技術がないとつくりたいかたちが出来ないし、技術が高いとそれが前に見えてしまう。 技術も土が相手の仕事だからか、自然と一体化して聖域に到達したみたいな感じになるんですね。
藤井 陶芸コースも工芸科の中にありますけど、染織でも漆でも最後まで自分の手でつくれるのに、陶芸だけ最後は窯なんですよね。
大橋 窯に入れて火の神様の応援を受けるような。神様が応援して下さったかもしれない作品を楽しみにしています。
作家略歴
1985 京都府生まれ
2007 京都精華大学芸術学部造形学科 陶芸専攻卒業
2009 金沢美術工芸大学美術工芸研究科(修士課程) 工芸専攻 修了
個展
2008 my color plant 藤井実佳展( 立体ギャラリー射手座/ 京都)
グループ展
2006 +α展(gallery MARONIE/ 京都)
第44 回朝日陶芸展  入選
JYUZANSOU ( 寿山荘/ 京都)
2007 京都精華大学卒業制作展(京都市立美術館)
少年陶芸探偵団 project2 (市之倉さかづき美術館/ 岐阜)
日中韓現代陶芸ー新世代交感展 (韓国工芸文化振興院/ 韓国 ソウル)
2008 2008 日中韓現代陶芸ー新世代交感展 (中国広東石湾陶磁博物館/ 中国 佛山)
パラレル (同時代ギャラリー shop collage/ 京都)
2008 金沢美術大学大学院修士課程修了制作展(金沢21世紀美術館/ 金沢)
第5 回京畿道世界陶磁ビエンナーレ(利川世界陶磁センター/ 韓国 利川)

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