やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

関口貴仁 展 ―朱彩壺Patterns in red―

関口貴仁 展 ―朱彩壺Patterns in red―

2008年10月8日(水)〜11月4日(火)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク  2008年10月8日(水) 18:30〜19:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif PDF 57KB ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

Photo: 七竈  H46×W36×D36cm 柘榴  H42×W32×D32cm 牡丹  H36×W39×D39cm 石楠花 H32×W38×D38cm 撮影:目黒敦



展示会概要
関口貴仁(Sekiguchi Takahito)さんの作品は、ふっくらと丸味を帯びたボディに、朱色にかすれた大輪の花々が描かれた壺です。 「朱彩壺」と名づけられたこの壺は、牡丹、七竃、柘榴、石楠花がモチーフとなっていますが、葉が影のようなシルエットだったり、花が赤い固まりだったりと、独自にデフォルメして、簡略化、平面的にデザインされています。
朱色や茶、ベージュの色調は大地の多彩さを連想させ、全体のかすれやこすれのマチエールは、図も地も混沌と溶け込んだような豊かな表情で、大胆で無造作な美しさがあります。
関口貴仁
関口貴仁
関口貴仁
関口貴仁
関口貴仁さんは、この独特の色調、表情をつくる為に、染色の蝋染めや型染めの技法を用いています。釉薬はごくわずかに吹き付ける程度で、その後それも削り落とし、還元焼成で痕跡をつけ、焼成を繰り返します。布にも通じる柔らかさ、温か味が生まれ、洗いざらしの綿布のような肌合いは、見る者に懐かしいような親しみを与えます。乾いた大地から伸びて咲いた花のように、プリミティブな力強さを持つ作品です。
関口貴仁さんは、東京芸術大学大学院を今年3月に修了した若手作家です。当初そのパターンや色彩のデザイン的にところに惹かれて染織を志していましたが、土に触れてその自然の温か味に共感を覚え、陶芸へ進みました。染色からイメージした植物のデザインと土の持つ大らかさが相俟って瑞々しい「朱彩壺」が生まれました。今展では3月の修了展から、さらに技術に磨きをかけた新作7点が展示されます。
関口貴仁
関口貴仁

Photo:ガレリアセラミカ会場 2008

インタビュー
2008年8月7日 インタビュー:大橋恵美(INAX文化推進部)
大橋 関口さんは今、大学院を修了して助手をされていますが、やきものを始めたのは芸大に入ってからですか。
関口 そうです。2年生の専攻分けで陶芸を選びました。僕は、もともと染織がやりたくて芸大に入ったんですけど、やってみて面白かったものを選んだ感じです。
大橋 染織というのは家業がそうだったとか。
関口 そうではありません。染織と言ってもファッションなどではなくて、僕がやりたかったのは着物なんです。ポップで、ちょっと温か味のあるものが好きで、友禅染めにすごく興味がありました。布は質感が柔らかくて暖かい印象を受けますし、モチーフもデフォルメされて可愛らしいデザインが多く、色も落ち着いた色が多いので、見ていて気分が落ち着くんですね。でも染物なんて経験した事もなかったので、半分思い込みに近い状態で芸大に入ったんです。その後、漆にも興味が湧いて。でも、染、漆、陶を経験し、土という素材の温か味や力強さに魅力を感じて、それが陶芸を選ぶきっかけになりました。
大橋 それまで身近で、ものづくりの仕事に触れることはありましたか。
関口 母が趣味人で色々なものをつくっていました。レザークラフトや陶芸もやっていました。そういうのを見ていて親しみやすかったし、親の理解もあったんですね。
大橋 子供は、大人が何かつくっているのを側で見ると、自分もつくりたいと思いますよね。
関口 そうですね。絵や彫刻などもいいんですけど、僕は人が使える道具が好きなんです。アートというより、生活の一部として存在する物の価値を大切にして自分なりに考えて制作してきました。
大橋 芸大は伝統工芸の技術を学ぶので良かったのではないですか。
関口 それが最近の学生は、オブジェやモダンな器をつくる人も多いんです。
大橋 昨年セラミカで展覧会をされた同じ芸大の藤笠さんは、彫刻科との交流授業が良かったと言われていました。
関口 芸大の島田先生がそういったことを積極的に受け入れたり、海外研修に行かせてくれたりするんです。アメリカや中国、韓国、メキシコ、僕の時にはトルコ。今年の3年生はアフリカへ行きました。陶芸のシンポジウムというかたちで行くので、日本人の感覚とは違った斬新なものを目にすることも多くて、今の学生は色々な影響を受けたり、貴重な経験を積むことが出来るのかもしれないですね。
大橋 技術的な課題はありますか。
関口 芸大は正式には3年から陶芸を始めるので、学校で陶芸を学べるのが2年間しかないんです。なので、大体の方が大学院に行ってそれでやっと4年。院では窯作りの勉強もやるので、自分のことをやる時間が少ないんですね。
大橋 皆つくる時間が少ないようですね。芸大生は総合的な優等生ですけれど、はずれる人は出て来ないんですよね。
関口 将来が不安なんだと思います。僕もそうです。
大橋 きっと、ものの意味、価値が見えにくいんですね。
関口 そうですね。作品の価値をどういう風に見出していくのかは難しいです。
他の大学はわからないですが、うちの大学は縦の繋がりが強く、家に招いてくださる先輩方もいます。その先輩方の生き方が僕らにとってはとてもリアルなんです。なので、どうしても追うというか。先輩のやって来た道をやれば生きて行かれると思ってしまうのかもしれないですね。 大橋:私たちの仕事としては、もっとないものねだりをしたくなりますね。
大橋 朱彩壺はどのようにして生まれてきたのですか。
関口 4年生の卒業制作では、高さ120cm位の人体と剣を合体したようなオブジェ三体をつくったんです。コンセンプト重視で人が立っているイメージでつくり、タイトルが「Standings」。辛いことや悲しいこと、挫折や後悔をしても、それでも人は生きていくということを表現したかったんです。
その時はアートをしたいっていうか、何かを表現したい年頃だったというか、どうにかして自分の考えを表現できないかと思ってやったのですが、もともと道具として使う陶器が好きだったので、やってみてすごく辛いし、あまり面白くありませんでした。
大学院からは器をつくりたいと思っていたのですが、技術がないので、ロクロなどの技術習得を目指し、それなりにロクロ成形出来る様になって、大学院2年生から大壺の練習に掛かりました。
大橋 これまでにいくつ位つくりましたか。
関口 20位ですかね。
大橋 そんなものですか。
関口 でも、ひくのはもっとひいています。練習しては潰したり、潰れたりしました。
大橋 この朱彩の絵付けは最初から決めていたのですか。
関口 それまでモチーフを使った絵はほとんど描かなかったんですけど、色は常にこの色を使っていました。赤と茶色と白。その中でも特に朱色に近い赤が好きなので、それをメインにしたいと思って、まずは作品の雰囲気から決めました。
その雰囲気で表現できるのは何かなと考えた時に、植物がまず頭に浮かびました。僕の好きな染物のイメージも強く自分の中にあったのだと思います。それを自分なりにデフォルメして可愛らしく、立体的でないペタッーと画面に張り付いたようなものができたらと思って、デザインを決めました。
大橋 すぐ色は出ましたか。かすれた独特の色合いですよね。
関口 出なかったですね。何度も失敗するので、卒業までに出来上がらないのではないかとハラハラしました。やっと最後の最後に1個できたので、それと同じ風にやってギリギリセーフでした。
大橋 作品の花は全部違っていて、絵付けの釉薬が滲んでいます。
関口 この作品は無釉に近い状態ですが、無釉にしてしまうと、粉っぽくてカサカサしてしまうので、水に近い位に薄めた釉薬を軽く吹き掛けて、ちょっとしっとりさせ、還元焼成で表面を少し焦がします。
素焼きの後にサンドペーパーを使い化粧土を落とすんですが、化粧土を落とし過ぎますと、真っ黒焦げになりますし、落とし足りないと真っ白になります。その微妙さがすごく難しいですね。
絵付けの部分は、液体ゴムでマスキングをして絵の具を吹き付けいます。絵の具や釉薬の濃度、焼成の強さなどが作品の表情に大きく影響しますが、こればっかりは微妙な調節なので経験を信じて自分の勘頼りになります。
大橋 花を描いた壺はよくありますが、関口さんの作品にはあまり見たことがない世界がそこにあるなと感じました。技法的なことを聞いて、伝統的なようで実は関口さんオリジナルなんですね。
関口 他にもこの様な技法を用いている方がいるのかもしれませんが、この作品は自分で考え、試し、辿りつきました。僕の壺はまん丸で、少し肩とか張っていますけど、コロン、コロン、コロンってイメージでやりたいんです。その方がなんか温か味があって可愛らしくて好きなんです。そうすると、絵付けはかたちを邪魔しない柄的なものの方がイメージに合います。
大橋 今展ではどのような展示になりますか。
関口 出来るだけ数をつくって、その中から選んで展示しようと思っているので、ぎりぎりまでつくります。同じものをずっとやっているようでも、ちょっとずつは変わっていくと思いますし、まだまだ駆け出しなので、自分がどうなるかわからないという楽しみもあります。
作家略歴
1982 埼玉県生まれ
2006 東京芸術大学工芸科卒業
2008 東京芸術大学大学院 修士課程修了 現在 同大学教育研究助手
■ 展覧会
2005 Ceramics Exhibition 2005 天王洲セントラルタワー1Fアートホール(06,07,08) 杜窯会 日本橋三越(07 ,08)
2006 日常のやきもの展 010ギャラリー
2007 日韓中現代陶芸―新世代の交感展 韓国工芸文化振興院
2008 東京芸術大学大学院43期陶芸専攻修了展 青山 桃林堂
受賞
2005 原田賞

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