やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

村上真以 展 ―水の白磁 波紋の表情―

村上真以 展 ―水の白磁 波紋の表情―

2008年3月7日(金)〜4月1日(火)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク 2008年3月7日(金) 18:30〜19:00

「泡のごとく」 2006 手前から Φ32/H21, Φ30/H18, Φ26/H20

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展示会概要
村上真以(Murakami Mai)さんの作品は、水をイメージした白磁のオブジェです。広がる波紋や、わずかに震える水の一瞬の表情を切り取って、波頭や水滴、泡を表わした、さわやかな印象の作品です。 1点の大きさは直径40cm、タイトル「水の呼吸」という作品では、白磁の同心円状のお椀型が5個重なったかたちをしています。青磁色の鏡面のように平らかに合わされた上面に、順々に緩やかな小さな波頭が立っていきます。「入れ子」状につくられた器のような作品ですが、ひとつひとつを独立してバラバラに置いても、重ねて置いても、小さな水溜りがいくつも現れたような瑞々しい風景が広がります。
また、タイトル「泡のごとく」という作品は、山高帽子をさかさまにしたようなかたちで、波の動きが大きく揺れ動くように表現されています。回転する独楽のような躍動感があり、波紋の線から10cmも飛び出したひとつ、ふたつの泡のかたちが独特の印象を与えます。細長く尖がって立ち上がる泡のひとしずくは、遠景に浮かぶダンスをする姿のようにも映り、滑らかな白磁の緊張感に伸びやかな陰影をつくり出します。

村上真以
村上真以 村上真以
村上真以さんは、愛知教育大で陶芸を専攻後、多治見市陶磁器意匠研究所に学びました。
美術の教師になることを目標に進み始めた大学3年生の後期2004年に、陶芸家中島晴美氏に出会います。「水の呼吸」はその時に生まれました。
陶芸の面白さに目覚め、卒業後は意匠研究所でデザインコースの鋳型の勉強を重ね、「水の呼吸」はより洗練されます。同時に、自宅ではずっと続けていたろくろでの制作を行い、「泡のごとく」が出来ます。
この過程で、やきもの=うつわを制作していた村上に変化が起こり、うつわとしての用を考えることなく作品をつくるようになります。「泡のごとく」は、ひとつずつつくった椀型を、これまで通りきっちりと入れ子状に合わせて制作しているにもかかわらず、焼成の段階で接着して、内部を覗くことができなくなっています。
今展は初めての個展開催となります。
村上真以
村上真以

Photo:ガレリアセラミカ会場 2008

インタビュー
2008年1月29日 インタビュー:大橋恵美(INAX文化推進部)
大橋 村上さんは今、多治見の工業高校の先生をしているんですか。
村上 はい、常勤講師です。高校卒業者から何才まででも陶芸を勉強できる専攻科と、高校生のセラミックを勉強する科の、両方の授業を平日の朝9時から夕方5時までやっています。
大橋 制作は仕事が終ってからですか。
村上 そうです。愛知教育大では、ろくろで入れ子の作品をつくっていました。
大橋 卒業制作展を拝見しましたが、器状の入れ子のオブジェでしたね。
村上 中島晴美先生の課題で入れ子があって、それでこの「水の呼吸」をつくりました。 中島先生は私が3年生の後半に愛知教育大に来られました。それまでは非常勤の先生の技術指導を受けていたんですが、先輩が中島先生に「こんなつまらんもの割っちまえっ。」と言われて涙ぐんでいるのをみて、もうすごい人が来たと思って。(笑)先生の作品は陶磁資料館で見て、こんな作品の人が来るんだ、すごいなとは思っていたんですけど。
大橋 これは気を引き締めてやらないと駄目だと。衝撃を受けて良かったですか。
村上 良かったですね。課題で入れ子と言われて、入れ子は取り出し難いから、取っ手がついたかたちを考えたのが「水の呼吸」なんです。まっすぐな所にピョコンと出ている盛り上がりが楽しいと思っているうちに、だんだん器なのか、なんなのかわからなくなっていったんです。
大橋 波が立ったような、水の波紋が広がっていくような感じが良かったです。最初は器をつくっていたんですか。
村上 ろくろをやっていたので器でしたね。それが「水の呼吸」では、実際に何を盛ろうか考えないでつくってしまった。楽しい楽しいだけで。入れ子がきちっと嵌った時にきれいだなと思うだけで。
大橋 自然な流れで変わっていった。先生の評価はどうでしたか。
村上 先生は、生徒を直感的にわかる人なので、バシバシ言う子には言うし、私は放って置かれる方だったので、おっ、いいぞいいぞと言うだけで。(笑)
大橋 村上さんからはガンガンやっている雰囲気が出ていたんだと思いますね。
村上 私、小学校からバスケをやっていて、大学でも部活ばかりやっていたので、先生には早く部活を辞めろと。
大橋 では教育大への入学目的というのは。
村上 :陶芸家ではなく、美術の先生の資格がとれると高校の先生に言われて。小さい頃から何かつくったりするのが好きで、母も美大のデザイン科を出て、家でお絵描き教室をやっていた。そんな影響もあって美術の方へ進みたいと思い、私は平面より立体が好きだったので、造形コースを選んだんです。
大橋 陶芸科を選んだ段階で、土という素材にはフィットしていたんですか。
村上 そうです。そこに迷いはなかったです。でもまだバスケばっかり。週に4回3時間ずつやっていた。私はそうやって発散しないと駄目なんです。
大橋 そういう生活の中で、「水の呼吸」が初めての自分の作品だったわけですね。
村上 その後の新しい課題になっても、私は入れ子が楽しくてつくり続けました。
大橋 5個の入れ子になっていますけど、技術的に合わせるのは大変ですよね。
村上 大変です。でもろくろでつくって、削って合わせるんですけど、ピタッと合った時はもう気持ちよくて。
大橋 八木明さんの入れ子の作品が有名ですけど、憧れますか。
村上 憧れるなんてとても。まだまだですから。
大橋 村上さんも青磁色の釉薬を使っていますが、これは水のイメージだからですか。
村上 そうです。タイトルをつけたのは最後だったんですけど。
大橋 5個1点の作品で、3組分15個つくる。3組とも波紋の幅が変わっていますけど、どうしてですか。
村上 これは教育大を卒業した後に、多治見の意匠研究所に行ったからだと思います。 大学で作品らしいものができたのがこれ1点だけだったので、もっとやりたいと思った。その時に先生から意匠研究所という所もあるぞと聞いて。意匠研究所ではデザインコースで、型が主です。最初は型が合わなくて、学校で型の作業をして帰って来てから、家の隣に借りた工房でろくろをしていた。
大橋 その影響で波紋の幅がデザイン的になってきたんですね。その後に「泡のごとく」が出来る。しぶきが登場した。
村上 これは意匠研究所の2年の時で卒業制作を考えている時に、グループ展に選んでもらってつくった。自分の作品はだんだん器じゃないなと感じるようになってきて、感情ばかりが高まって、こうなってしまった。
大橋 高まってというのは、これまで波紋だったところが感情的に勢いついてチャッポンと出て来ちゃった感じですか。
村上 出て来ちゃったんです。(笑)
大橋 その出て来ちゃったかたちが、先が尖がっているのが面白いなと思ったんですけど。
村上 この部分は泥しょうです。鋳込みをやるようになって泥しょうを使うので、そこから何か良いかたちはできないかと思って、百均で毛むくじゃらの毛みたいなものを買って来て泥しょうに浸して垂らしたらできた。
大橋 イメージはどんなものだったのでしょうか。泡ですか。生きものっぽい感じですよね。
村上 自分の中から出てくる感情というか。「水の呼吸」で女流の賞をもらったんですけど、出品した後に何か違うと思って、次にやってみたらこれが出てきたんです。
大橋 色々ある中から選んだのではなく、つくってみたらこれだったというところが村上さんらしいですね。「水の呼吸」では入れ子を大きさの順番に出して並べて展示されていましたが、「泡のごとく」は重ねたまま置いて展示するかたちなんですか。
村上 これは入れ子を引っ付けてしまって取れないんです。
大橋 それはなぜですか。わざわざ入れ子になるよう、きれいに削り合わせてつくってあるんですよね。
村上 「水の呼吸」ではキチキチに合わせなくてはならなくて、ちょっとでもズレると違う―って自分で直していたんですけど、それは器だったからです。でも「泡のごとく」は器ではなくなったからです。
大橋 そうですか。でも見た目にははずれるように見えますね。
村上 「はずれないじゃん」って皆に言われました。(笑) 大橋:今回展覧会の準備でご連絡した時に、これまでと全然違うタイプの新作を見せて頂きましたが。
村上 デザインコースで、生活に使うものをつくっていて、照明やティーセットをつくりました。「水の呼吸」のイメージで「ポット」とかけた「ポトン」シリーズで鋳込みです。上側と下側のデザインが違う二重構造の器です。「ナイトスイミング」はLEDを仕込んで明かりがゆっくり明滅する。これが新しいのでこの続きをやりたいなと思ったんですけど。
大橋 この作品は、ガレリアセラミカの個展で初めて村上さんを紹介する作品としては、まだ進行中でわかりにくいと思ったんですよ。
村上 私もそうだと思いました。やりたい気持ちがあって、でも今発表するには足りないというのもわかっていたんです。
大橋 ご相談しましょう。これからどんな作品をつくりたいですか。
村上 今日会場を改めて見て広いなと思ったので、これからろくろの作品もまだつくってみたいと思っています。
作家略歴
1982 岐阜県生まれ
2005 愛知教育大学造形文化コース 卒業、第7回国際陶磁器展美濃 入選、第43回朝日陶芸展 入選、第39回女流陶芸展 女流陶芸新人賞(京都市美術館)
■ 展覧会
2006 グループ展 「cera-mix 愛教大の造形」(目黒陶芸館/四日市)
2007 グループ展 「愛教大の造形展」(愛知県陶磁資料館/瀬戸)、多治見市陶磁器意匠研究所 卒業

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