お知らせ&トピックス


LIXIL ブックギャラリー 新刊案内18
「哲学は資本主義を変えられるか」

哲学は資本主義を.jpg



 ピケティが流行っている。何かと彼の言説が引用されてるのを見かける機会が多い。またインタビュー記事も頻繁にメディアに掲載されている。著書「21世紀の資本」は、易しいわけでも読みやすいわけでも、また安くもない。逆に小難しい専門書であるにもかかわらず、販売部数が100万部に到達しているそうである。
 これは、彼の主張が正しいとか誤りであるという以前の問題なのだろう。ピケティの扱うのは現代社会の経済的不平等と格差の問題である。ピケティ・ブームは、とりもなおさず、資本主義が生み出した格差に対する、私達の関心の高さ、問題意識の大きさを示している。それほど現在の経済的不平等に関する私達のストレスと不満は大きいのではないだろうか。

 「人間の未来 ─ヘーゲル哲学と現代資本主義」という題名で2009年に出版された書籍が、「哲学は資本主義を変えられるか ヘーゲル哲学再考」というタイトルの本書として再出版されたのも、こうした状況下ならではだろう。
 ヘーゲルは1770年〜1831年まで生きたドイツの哲学者である。なぜ今ヘーゲルなのか、という唐突感は免れない。しかし、近代社会の根本理念を築いているのはヘーゲル哲学であり、その本質を理解することが、現代資本主義の問題解決の糸口になる、というのが著者の考えである。
 近代以降の社会を考えるには、個々人の「自由」という問題が重要となる。そうした意味で、自由とその相互承認という概念を解いたヘーゲルの思想を抜きには考えられない。本書では、ヘーゲルの思想のエッセンスと、現代哲学が行ってきた分析について解説され、私達の資本主義理解の根本的誤りが指摘される。
 資本主義を超える思想としての社会主義や共産主義はすでに破綻が証明されている。人間の自由を尊重する限り、資本主義の廃絶は不可能である。ならば、この矛盾を調整できるような原理を生み出すしかない、というのが著者の論旨である。

 本書とピケティには何の関連もない。が、ピケティの提示する方法、広がる経済的格差の解決策は、著者の主張に則ったものであるようにも思われる。(資産課税や累進課税が実際にグローバルに実現可能かどうかという議論は別にして。)
 資本主義では、もう「経済成長はしない。成長戦略はない。」ことを認めるべきだと主張する内田樹のような思想家も存在する。しかし、さしあたり哲学によって現行資本主義が激変することはないだろう。修正されるには、長い時間がかかりそうである。


哲学は資本主義を変えられるか/竹田青嗣著/295ページ/KADOKAWA/1,120円+税

ページの先頭へ

LIXIL Link to Good Living

Copyright © LIXIL Corporation. All rights reserved.