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「ぼくの住まい論」

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 フランス現代思想研究家であり、武道家でもある著者の内田樹が2011年に建てた道場兼自宅「凱風館」。
 この建物を創り上げる過程で、著者が考えたこと、行ったことなど――土地を買うことから、住むことまで――をまとめたのが本書である。2012年に単行本として出版され、この度文庫化された。

 設計する建築家を決め、工務店を決め、材料を決める、といった家を建てるためにしなければならないことについてはもちろん触れられているが、重心はむしろ著者がそのように行動する「理由」、つまり著者の思想そのものにある。もちろん家を建てるということには、生き方そのものの表現が含まれるのは当然であるにしても、実利的な話に始終することなく、根本的な思想に触れられるところが本書の魅力ではないだろうか。

 著者は、ものを単なるものではなく、一種の精神性を備えたものとして捉えている。つまり、一枚の絵は一枚の絵として、家は家として、空間は空間として、独特のエネルギーやパワー、空気感や波動を発するものである。ものだけではなく人間もまた然りである。そして一つ一つの単体ではなく、波動の影響を与えたり与えられたりしながら、関わりあって全体として、世界は存在する。
 こうした考え方は、ものを単なる物理的なものとしかとらえなくなった近代以降、日本から失われて久しく、そして今最も必要とされている思想なのかもしれない。著者は失われた霊性を取り戻す試みを、「凱風館」を建てることを通して実践しているのである。



「ぼくの住まい論」/内田樹著/新潮文庫/207ページ/724円+税

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