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LIXIL ブックギャラリー 新刊案内 8
「挽歌集 建築があった時代へ」

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  本書は、著者と親交があった人々の逝去に記した「追悼文」を集めたものである。期間は1974年4月から2014年7月の約40年で、その数は50人。追悼されている人々は建築業界だけではなく、美術、文学、哲学、演劇など多岐に渡る分野で世界的に活躍し、名を残した文化人ばかりである。それはとりもなおさず、著者自身の活躍を示す1つの指標なのだろう。
  磯崎新といえば、押しも押されぬ建築界の大御所である。そして、「世界のアラタ・イソザキ」の眼を通した故人たちのエピソードは、著者の個人的体験であり、熱い思いの伝わる、非常に興味深いものばかりである。

 「前口上」と題された序文の中で、著者は自らを「能における翁役」に見立てている。普段は姿を見せず、寄り合いがあると出向いて祝言を述べるのが翁の役どころだという。1931年生まれの著者は今年83歳を迎え、年齢も役割も本人の見立てに遜色のないものだろう。本書は祝言ではなく追悼であるが、長く生きるということは、それだけ多くの友人たちを見送らなければならないということでもある。40年間に書かれたものをこうして1冊にまとめたことで、著者の脳裏には、友人たちとの懐かしい思い出がまざまざと浮かんだのではないだろうか。

 「20世紀へ」と括られた第3章は、新たに書き下ろされたものである。著者にとっては、20世紀こそが「建築のあった時代」なのであろう。「幻=影(ファンタスマゴリー)が消えた」と題され、著者の体験した20世紀が綴られている。建築=幻影なのだろうか。読む者にとっては、著者のこの文章こそ、幻影そのものであるように感じられる。



「挽歌集 建築があった時代へ」磯崎新著/白水社/342ページ/2,800円+税