お知らせ&トピックス


LIXIL ブックギャラリー お勧めの本 1
「アンビルト・ドローイング 起こらなかった世界についての物語」

アンビルト・ドローイング.jpg


 「ぼくたちは現実の時間を積み重ねて歴史をつくっていると同時に、その何倍ものパラレルワールドを日々喪失しながら、いまこの瞬間を生きているのです」

 著者は本書の序文で、こう述べている。「アンビルト・ドローイング」とは、何らかの理由によって実現されなかった建物や街を描いた絵のこと。本書にはその26のドローイングが選ばれ、著者により解説される。ドローイングの作者のほとんどは建築家であるが、ルドルフ・シュタイナーやキルヒャーの作品も含まれている。26枚のすべてに、著者は優しいまなざしを向け、言葉を紡いでいく。
 著者はその喪失した世界について嘆き悲しんでいるわけではない。ただ今この瞬間を豊かに、生き生きと生きるための想像と空想を楽しんでいる。

 取り扱っている対象や内容は専門的なものであるはずなのに、著者の語り口は難解でもなく、専門用語で埋め尽くされてもいない。
 思索は深く哲学的でさえあるのに優しさと愛にあふれており、読み手に安心感を与える。ドローイングの紹介にはさまれている4つのコラムのひとつが「愛情」と題されているところも著者らしい。


 同じ著者の「こっそりごっそりまちをかえよう。この大きな世界をつくるほんのちいさな作戦」という書籍も是非手に取っていただきたい。「1戸あたり床面積の国際比較」とか「社会的孤立の状況の国際比較」などのデータや数字を紹介しながら、「ネコの額とウナギの寝床のどっちが広いか議論してみよう」とか、「今日1日に何人と話したか、数えてから寝てみよう」と著者は提案し、私達にちょっとした発想の転換を促す。
 書籍の本来の目的とはずれているが、一つしかないこの世界の今と未来の大切さを考えさせてくれる。著者の温かい人柄が伺える書籍だ。このような建築家に家を建ててもらえたら、さぞかし居心地がいいだろうと想像さえしてしまう。 

「アンビルト・ドローイング 起こらなかった世界についての物語」 三浦丈典著/ 彰国社/142ページ/¥1,800+税
「こっそりごっそりまちをかえよう。」 三浦丈典著/ 彰国社/224ページ/¥1,800+税

ページの先頭へ

LIXIL Link to Good Living

Copyright © LIXIL Corporation. All rights reserved.